個人年金保険に加入し要件を満たすと、生命保険料控除の一つである個人年金保険料控除が適用できます。所得金額から一定の金額を控除できるので、保険料の積み立てによる計画的な資金準備を行いながら所得税と住民税が軽減され、場合によっては、税金の還付が受けられます。
この記事では、具体的に個人年金保険料控除の適用を受けるための条件や控除の上限金額、実際に税金はどのくらい軽減されるのかについて解説します。
2022年11月
個人年金保険料控除とは「生命保険料控除」の一つで、1年間に払い込んだ保険料の額に応じて一定額をその年の所得金額から差し引くことができる制度です。
生命保険料控除には「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3種類があり、そのうち個人年金保険料控除は最も控除を受けている人が少なく、給与所得者の約12.8%しか利用できていません。
個人年金保険料控除の額は、保険に加入した時期によって控除を受けられる金額が異なります。また、所得税と住民税でも控除額が異なりますので注意が必要です。
2012年1月1日以降に個人年金保険に加入した方の控除額は下の図のとおりです。
【所得税】
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,000円超 40,000円以下 | 支払保険料等×1/2+10,000円 |
40,000円超 80,000円以下 | 支払保険料等×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
【住民税】
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
12,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
12,000円超 32,000円以下 | 支払保険料等×1/2+6,000円 |
32,000円超 56,000円以下 | 支払保険料等×1/4+14,000円 |
56,000円超 | 一律28,000円 |
2011年12月31日までに個人年金保険に加入した方の控除額は下の図のとおりです。
【所得税】
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
25,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
25,000円超 50,000円以下 | 支払保険料等×1/2+12,500円 |
50,000円超 100,000円以下 | 支払保険料等×1/4+25,000円 |
100,000円超 | 一律50,000円 |
【住民税】
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
15,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
15,000円超 40,000円以下 | 支払保険料等×1/2+7,500円 |
40,000円超 70,000円以下 | 支払保険料等×1/4+17,500円 |
70,000円超 | 一律35,000円 |
※支払保険料等とは、その年に支払った金額から、その年に受けた剰余金や割戻金を差し引いた残りの金額をいいます。
2011年以前の契約と、2012年以降の契約の2つの個人年金保険に加入されている場合、以下の3つの方法の中で一番控除を大きく受けられる方法から選ぶことができます。
個人年金保険料控除の適用を受けるためには、3つの条件を満たす必要がありますので、順番に解説します。
年金の受取人は、保険料もしくは掛金の払込をする者、またはその配偶者となっていることが必要になります。
保険料等の払込期間は10年以上で、定期的に払い込む契約であることが必要になります。
年金受取開始年齢が原則として満60歳以上の契約、かつ受取期間が10年以上の定期または終身の年金であることが必要になります。
ここからは、個人年金保険料控除の適用を受けた場合、実際にいくらくらい税金が軽減されるのかについて解説します。仮に、30歳で年収500万(課税される所得金額に対する税率10%)の人が、月1万円(年12万円)の保険料で60歳払込満了65歳年金受取開始の個人年金保険に加入した場合を例に、実際に所得税と住民税が軽減される金額はいくらくらいなのかを計算してみます。
所得税の軽減額ですが、まずは所得税の税率は下記のようになっています。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
年間の支払保険料が120,000円となり80,000円超となるので、個人年金保険料控除の金額は上限の40,000円になります。
この40,000円に対してかかるはずの税金が軽減される対象です。
軽減される金額を計算すると、40,000円×税率10%=4,000円となります。個人年金保険料控除の金額が全額軽減されるわけではないので注意しましょう。
住民税の税率は所得税と異なり、所得に対しての税率は市町村民税6%・都道府県民税4%の10%で一定です。
年間の支払保険料が120,000円となり56,000円超となるので、住民税の個人年金保険料控除の金額は上限の28,000円になります。そのため、住民税の軽減される金額は28,000円×税率10%=2,800円です。
上記のように計算すると、所得税と住民税あわせて年間6,800円の軽減を受けることができます。払込期間が30年なので、個人年金保険に加入すると30年で204,000円の税金の軽減を受けることが可能となります。
最後に、個人年金保険料控除を受けるための方法について解説します。
控除を受けるには、生命保険会社から毎年送られてくる控除証明書が必要になります。手元にない場合は生命保険会社に再発行を依頼しましょう。
年収2,000万円以下かつ勤め先が一カ所の会社員の方の場合は、年末に行われる年末調整でも手続を行うことができます。「給与所得者の保険料控除申告書」に記入し、控除証明書を添付して会社に提出することで、個人年金保険料控除に関する申告は終わります。
個人事業主の方の場合は、確定申告書に生命保険料控除に関する事項を記載します。紙により確定申告を行う場合は、確定申告書に生命保険料控除証明書を添付します。また、国税庁のホームページからe-Taxにて電子により確定申告を行う場合は、生命保険料控除証明書(第三者作成書類)の内容を入力することで、生命保険料控除証明書の添付を省略することができます。(証明書は5年保存)
ここからは、生命保険料控除証明書についてのよくある質問を取り上げ、解説していきます。なお、ここで解説するのはあくまで一般的な内容です。
生命保険料控除証明書の細かな内容については、保険会社や契約時期によって異なる場合があります。詳しくは各保険会社の公式サイトをご確認ください。
生命保険料控除証明書には、主に下記のような内容が記載されています。
項目 | 詳細 |
---|---|
保険種類 | 加入している保険商品の名前 |
契約日 | 加入している保険の契約日。契約日によって新制度の対象か旧制度の対象かの判別ができる |
控除の区分 | 加入している保険商品が、どの控除区分に該当するのか |
払込保険料 | 毎月の払込保険料と、1年間に払込んだ保険料 |
その他、保険会社によっては「保険期間」「配当の有無」「保険料払込方法」が記載されている場合もあります。
生命保険料控除証明書の受け取り方は下記の2つです。
以前は郵送での受取のみでしたが、2019年から控除証明書の電子交付が可能となりました。契約者向けWEBサービスから電子データをダウンロードすることで、控除証明書を手に入れることができます。
印刷が必要な場合は、国税庁ホームページのシステムを使えばPDFに変換できるので、年末調整や確定申告にも利用可能です。
もし控除証明書を紛失してしまった場合でも、再発行が可能です。
郵送での再発行を希望する場合は、下記のいずれかの方法で再発行が可能です。
保険会社のコールセンターに依頼する場合、契約を特定する必要があります。「保険証券」など契約内容が特定できるものを手元に準備したうえで依頼しましょう。
ただし、郵送の場合は手元に届くまで時間がかかりますので、急ぎの場合は電子データのダウンロード・印刷をおすすめします。
生命保険料控除証明書は、毎年10月頃から翌年1月頃にかけて保険会社から契約者あてに郵送されます。
ただし、いつ頃発送になるかは加入した時期や保険料の払い方によって変わるので、注意が必要です。
なお、住所変更をしていない場合は控除証明書が届かない可能性があるので、保険会社に届け出ている情報に変更や誤りがないか、あらかじめ確認しておきましょう。
個人年金保険は、貯蓄をしながら税金の軽減も受けられるため、効率よく老後資金の準備ができます。控除を受けたい場合は下記の3点に注意して加入してください。
※当社の変額個人年金保険(無告知型)22/無配当および一時払変額個人年金保険(無告知型)22/無配当は、個人年金保険料控除の対象ではありません。一般生命保険料控除の対象となりますのでご注意ください。なお、これらの保険は、国内外の株式や債券等で運用されており、その運用実績によっては、年金の合計金額・死亡給付金額・災害死亡給付金額・解約返戻金額が、払込金額の合計を下まわる場合があり、損失を生じる可能性があります。また、所定の費用が掛かります。詳しくは商品パンフレット、「ご成約のしおり・約款」「契約概要」「注意喚起情報」をご確認ください。
【商品パンフレット】
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無料で保険・ライフプランニングを相談する当資料は2022年9月現在の税制・税率に基づき作成しております。税制・税率は将来変更されることがありますのでご注意ください。詳細につきましては、税理士または所管の税務署にご確認ください。
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