「iDeCo(イデコ)をやってみたいけど、デメリットってあるの?」
老後2,000万円問題や公的年金の支給額の引き下げが話題となった昨今、私的年金であるiDeCoが注目を集めています。
本記事は、iDeCoの利用を検討しており、始める前にメリット・デメリット、職業別の注意点を知りたい人に向けての記事です。
事前に読んで理解することで、「こんなはずじゃなかった!」といった後悔をしなくて済みます。
公開日:2022年7月20日
更新日:2023年2月28日
確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の制度のiDeCoは、メリットが大きい制度です。
iDeCoは国が用意した、自分年金づくりのための手段です。資産形成初心者の人には、登竜門的な位置づけでもあり、投資はまずiDeCoから始めるという方も少なくないでしょう。
iDeCoの主なメリットは以下の3点になります。
それぞれのメリットについて解説していきます。
1つ目のメリットは、積立時に掛金全額が所得控除対象になることです。iDeCoに拠出する掛金は「所得控除」の対象ですので、その年の所得税や翌年の住民税が安くなります。
例えば毎月2万円を拠出する場合、所得税率が20%であれば、年間で4万8,000円分の所得税が控除されます。
つまり、自身で拠出することで、将来の備えをしつつ所得控除を受けることができるのです。
2つ目のメリットは、運用利益が全て非課税になる点です。
通常は投資で利益が出ると、運用益に対して税金がかかります。一方で、iDeCoによって得た運用益には税金がかかりません。
つまり、iDeCoから得られた運用益は全額非課税となるため、運用益全体が資産となるのです。
さらに、iDeCoは最長75歳までの超長期投資となりますので「複利効果」も高まり、利益は年を追うごとに膨らむ場合もあります。
3つ目のメリットは、受取時にも税制優遇があることです。iDeCoは受取時に税制優遇を受けることができます。
iDeCoの受取方と受取方による税制優遇措置(控除)は、下記のとおりです。
自分に合った受取方はどのパターンとなるのか、受取前に事前に検討しておくことをおすすめします。
1点、iDeCoの掛金を控除する際には手続が必要になりますので、注意してください。
iDeCoのデメリットは大きく下記の4つです。
各項目に関して詳しく解説しますので、それぞれの内容や、ご自身に当てはまる項目がないか確認してみてください。
1つ目のデメリットは、60歳まで資産を自由に引き出せないことです。
iDeCoは、老後の資産形成を目的とした制度のため、つみたてNISA等と異なり、原則途中解約できません。さらに加入年数が10年未満の場合、60歳になっても受け取れない(受給が遅れる)ケースがあります。
長い人生の中では、子供の教育資金や家の購入など、まとまったお金が必要な時期もあります。
従ってiDeCoに取り組む際は、家庭の収支バランスを考慮し、ある程度余裕のある状態で始めることをおすすめします。
2つ目のデメリットは、運用実績によって資産が増減することです。
iDeCoは株や債券、投資信託を含む金融商品です。そのため、元本割れする(当初の購入代金を下回る)可能性があり、場合によっては利益がマイナスになることもあります。
リスクのない元本保証の商品ももちろんあるのですが、その場合利益は少なくなります。
資産形成初心者の方にとって、iDeCoのどのような金融商品を購入するかは迷うかと思います。投資に関する書籍を購入したり、保険会社のセミナーやYouTubeで投資の勉強をしたりと、事前に知識を充分に身に付けておくことが必要です。
3つ目のデメリットは、各種手数料が必要な点です。iDeCoには税制優遇の仕組みがあるため、資産運用の手段としては非常に有効です。
しかし、各種手数料はiDeCoの加入者の負担となります。そのため、元本保証の商品のみを購入していると、運用で得た利益よりも手数料の方が多くなってしまう可能性があるので注意してください。
必要な手数料は主に下記の4つです。
手数料と運用利益がどれぐらいとなるのかしっかりと理解することで、このデメリットは克服することが可能です。
4つ目のデメリットは、加入条件があることです。iDeCoは便利な制度ではありますが、全員が加入できる訳ではありません。
iDeCoに加入できない方は、以下になります。
まず、国民年金保険料は公的年金のベースとなる部分ですので、確実に払い込みましょう。
3に関しては、リターンは少額ですが元本割れするリスクがない農業者年金か、元本割れする可能性はありますが、その分大きなリターンが期待できるiDeCoを選択するかという2択になります。
どちらを選択するかは、各自の生活スタイルやリスク許容度に応じて決めるとよいでしょう。
また、以前は「勤務先の企業型DCの規約でiDeCo加入が認められていない方」も加入ができませんでした。しかし、2022年10月1日にすでに緩和されており、企業型DCに加入している方は今一度iDeCo加入を検討してもいいでしょう。
iDeCoは、職業によって拠出限度額に違いがあります。
今回は、下記4つの職業について注意点を紹介します。
自営業者がiDeCoに加入する際は、仮に収入がなくなった場合でも掛金の変更に時間がかかる点に注意しましょう。
掛金は年1回変更できますが、最短でも翌月、月の後半に変更届を提出すると翌々月から変更が適用されます。
自営業者は会社員や公務員と異なり国民年金のみのため、iDeCoの拠出限度額は毎月6万8,000円(年間81万6,000円)と最も高くなっています。
一方で、自営業者は会社員や公務員と比べて収入が不安定になりやすいと考えられます。そのため、iDeCoの拠出額に関してはよく検討し、無理のない範囲にとどめるとよいでしょう。
公務員は、他の職業と比べてiDeCoの拠出限度額が低い点に注意しましょう。公務員の拠出限度額は毎月1万2,000円(年間14万4,000円)です。
2024年12月には制度改正され、公務員の拠出限度額は毎月2万円(年間24万円)に引き上げられる予定です。
以前公務員の年金といわれていた共済年金は、厚生年金に統合されています。早いうちからiDeCoで老後の備えを始めることを検討してみましょう。
公務員がiDeCoに加入する場合のメリットや注意点については、以下の記事にて解説しています。より詳しく知りたい方はぜひ確認してみてください。
参考記事:公務員がiDeCo(イデコ)に加入するべき5つの理由|上限引上の詳細も解説
会社員は、所属している会社によってiDeCoに加入している金融機関が異なります。転職する度に一旦投資商品を売却するため、タイミングによっては損失が発生する可能性がある点に注意しましょう。
また、会社員は会社の年金制度によって拠出限度額が4パターンにわかれます。
DBとは、確定給付企業年金だけでなく、私立学校教職員共済、厚生年金基金、石炭鈜業年金基金も意味として含まれます。
転職して拠出限度額が低い会社に入社すると、転職先に合わせて掛金を調整する必要があります。
他の職種と比べて複雑な点はありますが、公務員と同様に2024年12月には制度改正され、拠出限度額は月2万円と月2万3,000円の2パターンに整理される予定です。
数年以内に転職するつもりがないのであれば、会社員もiDeCoの加入を前向きに検討してよいでしょう。
会社員がiDeCoに加入する場合のメリットやデメリットについての詳細は以下の記事に記載していますので、ぜひご覧ください。
参考記事:会社員にはiDeCo(イデコ)はおすすめ?加入できる条件と合わせて解説
主婦(主夫)がiDeCoに加入する際は、収入によってはiDeCoの所得控除が活かせない可能性がある点に注意しましょう。特に、配偶者の扶養に入ってパートやアルバイトをしている方は、掛金の所得控除による税制メリットがあまりありません。
一方で、iDeCo受取時の所得控除(公的年金等控除・退職所得控除)は受けられます。iDeCoは最短で60歳に掛金+運用益の総額を受け取れますが、受取時に所得税が発生します。この所得税を軽減するのが、受取時の所得控除です。
年金として受け取る場合は、公的年金等控除が受けられます。
公的年金などの収入金額が、65歳未満は60万円以下、65歳以上は110万円以下である場合、公的年金等控除によって所得が0円となり、税金がかからなくなります。よって、主婦(主夫)は会社員や公務員と比べて公的年金の額が少ないため、受給時に課税されることなく受け取れる可能性が高くなります。
一時金として受け取る場合は、退職所得控除が受けられます。
退職金がある会社員や公務員は、退職金とiDeCoからの受取金額の総額に対して退職所得控除が適用されるため、退職金の額によってはiDeCoの受取時に所得税がかかる場合があります。しかし、主婦(主夫)には退職金がないため、退職所得控除は退職金がある人より有利になります。
主婦(主夫)の拠出限度額は月2万3,000円(年間27万6,000円)で、企業年金がない会社員と同額です。掛金の所得控除による税制メリットが少ないため、つみたてNISAをはじめとした他の制度と比較しながら検討することをおすすめします。
主婦(主夫)がiDeCoに加入する場合のメリットやデメリットについては、以下の記事により詳しく記載しています。iDeCo以外の資産運用も記載していますので、ぜひ一度ご覧ください。
参考記事:主婦(主夫)がiDeCo(イデコ)に加入するメリット・デメリットを解説
参考:iDeCo公式サイト「iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】」
今回はiDeCoのメリット・デメリットを紹介しました。
iDeCoには、掛金の所得控除や運用益の非課税といった税制優遇措置がある一方、途中解約できず、60歳まで資産を引き出すことができないというデメリットもあります。
また、運用状況によって資産が元本割れする可能性があることも理解が必要です。手数料も積み重なると大きな金額となるので注意が必要です。
特に、収入が安定しない自営業者や掛金に対する所得控除が受けられない主婦は、より慎重に検討したほうがよいでしょう。
ご自身の無理のない範囲で、iDeCoなどの資産形成に資金を振り向けてみてはいかがでしょうか。
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