「不動産投資をするとどのような税金がかかる?」
「不動産投資には税軽減効果があるの?」
不動産投資を始めるにあたって、このような疑問を抱えている方もいるのではないでしょうか。
不動産投資の場合、購入した時、手放す時、そして運用して収入を得た場合などに、税金がかかります。
本記事では、不動産投資にかかる税金、税軽減効果、不動産所得の計算方法について解説します。不動産投資に関する税金のことでお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
公開日:2022年8月24日
更新日:2023年4月28日
不動産投資は、アパートやマンション等の不動産を購入・運用することで、利益を得る投資方法の1つです。一般的にミドルリスク・ミドルリターンの投資とされています。
利益を得る仕組みとして、不動産の賃貸料で利益を得る「インカムゲイン」と、購入した物件を売却して利益を得る「キャピタルゲイン」の2種類があります。
不動産投資を行うと、購入時・運用時・譲渡・相続時・売却時にそれぞれ税金がかかり、次のとおりです。
どんな状況でもこれら全ての税金が課せられるということではなく、一定の条件を満たした場合に税金がかかる場合もあります。
それぞれの税金について、詳しく解説します。
不動産投資用物件の購入時にかかる税金は次のとおりです。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
不動産取得税は、不動産を取得した場合に課せられる税金です。相続で取得した場合には課税されません。
計算式は次のとおりです。
不動産取得税額=不動産の課税標準額×税率
税率は次のとおりです。
不動産の課税標準額とは、原則として固定資産課税台帳に登録されている価格です。実際の購入価格ではない点に留意しましょう。
印紙税は、不動産購入時・売却時の契約書に貼り付けて納税します。印紙税対象となる契約書は主に次の2つです。
不動産売買契約書の印紙税は、2014年4月1日~2024年3月31日まで軽減措置がとられています。印紙税額は契約金額により異なり、下記のとおりです。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
100万円超500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
※軽減措置により1億円以下は半額となっていますが、1億円から5億円以下は6万円、それ以上の印紙金額は段階ごとに細かく決まっています。
新築戸建てを購入する場合は工事請負契約書も追加されます。
参考:国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
参考:国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」
登録免許税は、不動産取得を公示するための登記の際に課される税金で、計算式は次のとおりです。
登録免許税=固定資産税評価額×税率
主な税率は次のとおりです。(2024年3月31日まで軽減措置)
※数字は本則
※融資を受ける際の抵当権設定登記に関しては、評価額でなく借入額に対して税率をかけて計算します。固定資産課税台帳に登録された価格がない場合は、登記官が認定した価額(国税庁)」となります。
消費税は購入した建物代金の10%です。土地の購入は非課税取引となり、消費税はかかりません。
不動産を所持して運用しているときにかかる税金は次のとおりです。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
固定資産税は不動産を所有している人が支払う税金です。その年の1月1日に不動産を所有している人が市区町村などに対して支払います。
固定資産税の計算式は次のとおりです。
固定資産税=固定資産税評価額×1.4%
ただし、アパートやマンション経営など、住宅用地を資産運用している場合は軽減措置を受けられます。
住宅用地についての軽減は次のとおりです。
なお、要件を満たした場合は新築住宅にかかる固定資産税は3年間(マンションなどは5年間)、2分の1に減額されています(2024年3月31日まで)。
市街化区域内の土地・建物に課されるのが都市計画税です。計算式は次のとおりです。
固定資産税=固定資産税評価額×税率
都市計画税の税率は上限が0.3%と定められています。市区町村により、税率が異なります。また、軽減税率を設けているところもあるため、確認しておきましょう。
不動産投資で得た所得に対し、所得税・住民税がかかります。
所得税=課税所得×税率-課税控除額
なお、住民税の税率は一律10%(所得割部分のみ)、所得税の税率は課税所得金額により異なり、下表のとおりです。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円~194万9,000円まで | 5% | 0円 |
195万円~329万9,000円まで | 10% | 9万7,500円 |
330万円~694万9,000円まで | 20% | 42万7,500円 |
695万円~899万9,000円まで | 23% | 63万6,000円 |
900万円~1,799万9,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円~3,999万円9,000円まで | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
参考:国税庁「タックスアンサー|No.2260 所得税の税率」
不動産売買業、不動産貸付業とみなされる規模(アパートやマンションの場合は10室以上保有など)で、家賃収入が一定以上ある場合、個人事業税が発生します。
個人事業税の計算式は次のとおりです。
個人事業税=(収入-必要経費-事業主控除290万円)×5%
所得税・住民税とは異なり青色申告特別控除は適用されません。
譲渡または売却時にかかる税金は次のとおりです。
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
不動産の売却時に得た譲渡所得に対して所得税・住民税が課せられます。
売却時の所得税は給与所得などとの損益通算が行えない点を把握しておきましょう。
譲渡所得の計算方法は次のとおりです。
譲渡所得税={譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)}×税率
取得費とは不動産の購入価格と取得時の諸費用を足し、建物の減価償却費用を引いたものです。譲渡費用とは、不動産を譲渡・売却した時の諸費用を指し、仲介手数料や収入印紙代などを含みます。
譲渡した年の1月1日現在の所有期間により、短期譲渡と長期譲渡に区分されます。それぞれの税率は下記のとおりです。
項目 | 所有期間 | 税率 |
---|---|---|
短期譲渡 | 5年以下 | 39.63% |
長期譲渡 | 5年超 | 20.315% |
5年を境に税率が大きく異なる点に留意しましょう。
参考:国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
不動産売却時に「不動産売買契約書」を作成します。双方の分の契約書を作成する場合、2通とも課税文書と見なされ印紙税が必要です。
不動産を売却する際、抵当権がついていたら、抵当権抹消登記を行わなければなりません。抵当権抹消登記は、不動産1つにつき1,000円必要になります。
相続で名義人が変わる場合も登録免許税が必要です。計算方法は次のとおりです。
登録免許税=不動産の価格(課税額)×税率0.4%
不動産を相続した場合は相続税がかかります。相続税の計算式は次のとおりです。
相続税=(全ての財産額-基礎控除額)×相続税率
基礎控除額の計算式は次のとおりです。
基礎控除額=3,000万円+(6百万円×法定相続人数)
また、税率は法定相続人の取得金額により異なります。
取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | ― |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
利益を得る目的だけでなく、税軽減効果を享受するために不動産投資を始めるべきなのでしょうか。
後ほど解説しますが、不動産投資には確かに税軽減効果があります。ただ、不動産投資はあくまで「投資方法」の1つで、不動産の運用で利益を得ることや、将来に向けた資産形成をすることが主な目的になります。
税軽減効果は副次的なものであるという点は、あらかじめ認識しておきましょう。不動産投資を始める場合は、税軽減効果を得ることだけを考えるのではなく、不動産投資の基礎知識やリスクとリターンもしっかりと確認したうえで判断しましょう。
不動産投資を行う前には、仕組みを十分に理解しておく必要があります。この機会に、不動産投資をすることで受けられる税軽減効果について、理解を深めておきましょう。
青色申告特別控除とは、確定申告において青色申告を行う場合に受けられる所得控除のことです。不動産所得が生じる事業を営んでおり、他にも要件を満たせば、青色申告特別控除を受けることができます。
「注」)不動産所得の金額が55万円より少ない場合には、その合計額が限度です。
還付申告書等を提出する方であっても、55万円もしくは65万円の青色申告特別控除の適用を受けようとすると、その年の確定申告の期限までに当該申告書を提出する必要があります。
青色申告を行っているが、上記2つに当てはまらない方。
参考:国税庁「タックスアンサー|No.2072 青色申告特別控除」
必要経費とは、「所得を得るために必要な経費」であり、所得金額は収入から経費を引いて計算されます。そのため、必要経費が増えると不動産所得が減少し、不動産所得に対して課される税金も減少することとなります。
ただし、全ての費用が経費として計上できるわけではありません。どの費用が必要経費として計上できるのかについては十分理解しておく必要があります。
例えば、生計を一にする配偶者その他の親族への地代家賃などについては必要経費として計上できません。逆に、受け取ったほうも所得としては考えません。
減価償却費とは、不動産等の固定資産は時間が経つにつれてその価値が減っていくという考え方に則って計上される費用のことです。建物・機械・自動車などの固定資産は、一度の使用で価値がなくなるわけではなく、長年使い続けることにより、徐々にその価値が下がっていくこととなります。
そのため、減価償却費については、確定申告にて、定められた年数にわたって毎年分割して経費に計上します。減価償却費は上記の必要経費として計上できます。
損益通算とは、総所得金額・退職所得金額・山林所得金額等を計算するうえで、所得の金額の計算上損失が生じた場合に一定の順序に従い、他の各種所得の金額から控除を行うことです。
言い換えると、不動産所得がマイナスである場合には、そのマイナス分を総所得金額、退職所得金額または山林所得金額等から差し引くことができるということです。
ただし、不動産所得の金額の計算上で生じた損失の金額の中で、次に掲げる損失の金額等については、他の各種所得の金額から控除することができないため注意が必要です。
土地・建物を共に購入した場合は、土地部分の借入金とその負債利子の額を明らかにしておきましょう。
不動産所得とは、土地や建物などの不動産の貸付け等による所得のことです。
不動産所得の金額は、次の計算式で計算されます。
不動産所得の金額=総収入金額-必要経費
総収入金額や必要経費にはどのようなものがあるか、具体例を見ていきましょう。
総収入金額には、次のようなものが含まれます。
必要経費とすることができるものは、不動産収入を得るために直接必要となる費用の中で家事上で用いた経費と明確に区分できるものです。
主なものとして次に掲げるものが必要経費になります。
不動産投資により、さまざまな税金削除効果が得られます。例えば、不動産投資が赤字になった場合でも、総所得金額などと損益通算できるため、魅力を感じる方もいるでしょう。ただし、不動産所得が赤字になった場合、土地の負債利子は損益通算の対象金額にはできません。
また、投資を行うことによって発生する税金もあります。現在の所得や不動産投資のリスク・リターンなどを加味し、本当にメリットがあるかどうかを踏まえたうえで投資の判断をしてみましょう。
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当資料は、2023年4月現在の税制・税率に基づき作成しております。税制・税率は将来変更されることがありますので、ご注意ください。また個別の税務に関する取扱については、税理士または所轄の税務署にご確認ください。
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