サラリーマンの副業の税金はどうなる? メリットや注意点、確定申告でのポイント

サラリーマンが副業を行った場合、確定申告や納税が必要になることがあります。

「副業でいくら以上稼いだら確定申告をしなければならないのだろう」「この所得は事業所得? それとも雑所得? どちらで申告すればよいのだろう」など、納税や確定申告に関する悩みを持っている方もいるでしょう。

本記事では、副業をするサラリーマンが受けられる税制メリットや条件についても解説しますので、参考にしてください。

公開日:2022年8月24日
更新日:2023年4月28日

サラリーマンが副業する際に知っておきたい所得の種類について

所得税法上、所得は次の10種類に区分されています。

  • 利子所得
  • 配当所得
  • 不動産所得
  • 事業所得
  • 給与所得
  • 退職所得
  • 山林所得
  • 譲渡所得
  • 一時所得
  • 雑所得

所得の種類によって税金の計算方法は異なります。

なかでも、副業を行うサラリーマンが特に知っておきたいのは以下の3点です。

  • 働き先から受け取る給与は「給与所得」
  • サラリーマンの副業は基本的に「雑所得」
  • 副業のうち、事業としての要件を満たす収入は「事業所得」として扱われる

参考:国税庁「タックスアンサー|No.1300 所得の区分のあらまし」

事業所得に該当する副業とは

サラリーマンの副業に事業性が認められた場合は、「事業所得」として扱われます。なお、事業が不動産貸付などの場合は、「事業所得」ではなく「不動産所得」となる点に留意しましょう。

副業を事業としてみなすための判断材料は、「安定した収入が継続した期間において得られている」「ある程度の時間を費やしている」「職業として認知されている」「社会通念上事業とみなされる」ことなどが挙げられます。

そのため、安定的な収入が得られていない、利益が出ない状態が続いている、といった場合は事業所得と認められないこともあるため注意が必要です。

税制メリットを目的とした副業は問題ない?

サラリーマンが事業所得として副業を行うのであれば、税金面でのメリットはあります。

ただ、メリットを享受することを主な目的とした副業にはリスクがあります。副業と銘打っているにもかかわらず収入を得ることをおろそかにした副業は、悪質な税金対策と判断される可能性があるからです。

まずはしっかりと税金の種類や仕組みについて理解するとともに、副業によるメリットはあくまで副次的なものとして捉え、副業で利益を得ることをメインに行動しましょう。

副業を行うサラリーマンが得られる税金面でのメリット

サラリーマンが事業所得としてみなされる副業を行う場合、税金面で複数の優遇措置を受けることが可能です。青色申告特別控除、純損失の繰越し、損益通算、必要経費の計上が挙げられます。

ただし、雑所得として扱われる場合は、これらのメリットは受けられないため。事前に確認しておきましょう。

それぞれのメリットについて解説します。

青色申告特別控除が受けられる

副業をするサラリーマンが受けられる税制メリットに「青色申告特別控除」があります。青色申告とは、確定申告方法の1つで、原則として複式簿記により取引内容を記帳し、確定申告を行う制度です。

青色申告は、申告の手続や帳簿付けに手間がかかるものの、以下のメリットがあります。

青色申告特別控除

所得内容に応じて65万円・55万円・10万円の所得控除を受けることができます。つまり、課税対象となる所得の金額から最大65万円を差し引くことができるということです。結果として課税対象となる金額を抑えることができます。

純損失の繰越し

一定の所得で損失(赤字)を出した場合、翌年から最長で3年間、赤字を繰り越して利益から差し引くことができます。

例えば基準の年(0年目)に100万円の損失が出た場合を見ていきましょう。翌年以降、最長で3年間の間に利益が出た際に、損失の100万円を利益から差し引くことが可能です。

仮に翌年(1年目)80万円の利益が出た場合、0年目の80万円の損失と相殺できます。残り20万円はさらに翌年(2年目)、翌々年(3年目)に繰り越せるということです。

参考:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」

損益通算ができる

損益通算とは、各種所得金額の計算上生じた損失のうち一定のものについてのみ、一定の順序に従い、総所得金額・退職所得金額・山林所得金額等を計算するうえで、他の各種所得の金額から控除することです。

不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得の赤字のみが損益通算の対象となるため、サラリーマンが損益通算を行う場合は、副業を事業的規模で行う必要があります。

必要経費を計上できる

サラリーマンをしながら副業をすることになれば、副業で収益を得るために使った費用を、必要経費として差し引くことができます。所得税は、収入から必要経費を引いた所得に対してかかるため、課税所得金額を抑えられます。

副業をする目的で購入したパソコン・文房具、オフィスとして使っている自宅の家賃・光熱費の一部を必要経費として計上することが可能です。

副業を行ううえでサラリーマンが注意したいこと

副業をしているサラリーマンの場合、副業での所得が20万円を超えれば、会社が年末調整を行っていても確定申告が必要です。

税金面で優遇措置が受けられるため、事業として副業を展開したい方もいるでしょう。その際は事前に注意しておきたいことがあります。

不動産投資を行う場合、開業届を出して副業を行う場合の注意点についてそれぞれ解説します。

一定の事業的規模を満たした不動産投資をする

不動産投資としての家賃収入が事業的規模と認められるためには、一定の基準(アパート・マンションの場合は10室以上・貸家の場合は5棟以上)が定められています。

ただし、一定の基準を下回る室数・棟数だったとしても、受け取る賃料規模が相場よりも大きい場合などは、税務署に個別に相談してみるとよいでしょう。

失業保険がもらえない

失業保険は、公的保険制度の一種です。正式には「雇用保険」といいます。加入者は失業した場合等に、「失業手当(正式には基本手当)」を受給できます。しかし、開業届を出し個人事業主として開業している場合、本業の仕事を失っても無職状態とはいえないため、失業保険を受け取ることができません。

仮に開業して売上がなくても、失業手当の受給はできません。

副業を行っているサラリーマンが確定申告する際のポイント

税金を源泉徴収されている会社員にとっては、確定申告の手続についてイメージがわかないことも多いのではないでしょうか。

副業をしているサラリーマンの場合、副業での所得が20万円を超えれば、会社が年末調整を行っていても確定申告が必要です。

サラリーマンが副業を行うと確定申告が必要になる可能性が生じます。ここからは、副業で確定申告が必要なパターンや注意すべきポイント、スマートフォンで確定申告する方法や控除の種類を解説します。

複式簿記にて記帳する

55万円の青色申告特別控除を受けるための要件は、次のとおりです。

  1. 不動産所得または事業所得が生ずべき事業を営んでいる
  2. 1 の所得に関する取引を、原則として複式簿記により記帳している
  3. 2 の記帳に基づいて作成された貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付して、青色申告特別控除の適用を受ける金額を記載したうえで、確定申告期限までに確定申告書を提出する

さらに65万円の青色申告特別控除を受けるためには、次のいずれかに該当していることが必要です。

  • その年分の事業に係る仕訳帳および総勘定元帳について、電子帳簿保存を行っている
  • その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表と損益計算書等の提出を、提出の期限までにe-Taxを使用して行う

期限内に確定申告をする

例外的に延長となる年もありますが、通常、確定申告の提出期間は毎年2月16日〜3月15日までです。申告方法は、直接税務署に出向いて提出する方法の他に、インターネット(e-Tax)での申告も可能です。

申告期限間際の手続は大変込み合うため、余裕を持った申告を心がけることが大切です。

住民税の普通徴収を選ぶ

住民税の金額は前年の所得金額によって決まります。

一般的にサラリーマンの場合、会社が従業員の給与から住民税を差し引いて各市町村に納税する「特別徴収」という方法で納税しています。特別徴収を利用した場合、住民税の額が極端に上がると給料以外にも収入があることが会社に知られることになります。

住民税の額を会社に知らせたくない場合は、自分で確定申告を行う際に「住民税に関する事項」で「自分で納付(普通徴収)」を選択しましょう。ただし、副業が給与収入のみの場合は、普通徴収に切り替えることはできません。

自分の副業がどんな所得の種類になるかを確認しよう

サラリーマンが副業で税制優遇のメリットを得たい場合は、副業が事業として認められなければなりません。一般的にサラリーマンの副業は雑所得とみなされます。

事業所得とみなされるためには、「継続して安定収入を得られているか」「社会通念上事業と称される程度に行っているか」などの基準を満たさなければなりません。確定申告をする際は、慎重な判断のもと適切な申告をすることが大切です。

副業の所得が事業所得である場合は、工夫次第で税金を減らすことができます。

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当資料は、2023年4月現在の税制・税率に基づき作成しております。税制・税率は将来変更されることがありますので、ご注意ください。また個別の税務に関する取扱については、税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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