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相続税の基礎控除とは?計算方法や対象となる財産の種類などを解説

dotL編集担当者B

相続税は、遺産を相続し基礎控除額を超えた場合にかかる税金です。もし、相続税が発生した場合に申告をしないと、延滞税や加算税などがかかることがあります。一方で、死亡保険金の非課税枠や各種控除を上手に活用することで税負担を軽減することもできます。相続が発生した場合に間違えないように、本記事で確認していきましょう。

更新日
2025年1年23日(木)
掲載日
2024年5年15日(水)

10分

※当記事は、ソニー生命から尾崎ファイナンシャル・プランニング技能士へ執筆を依頼し、原稿をソニー生命にて編集したものです。

親や親族の遺産を相続することになった場合、相続税の額や計算方法をきちんと理解できていない方もいるでしょう。相続が発生した場合、亡くなった方の財産をもとに相続税を計算しますが、相続税が発生しないケースもあります。
しかし、相続人の人数や財産の状況によっては、相続税の申告と納税が必要になり、正しく申告しないと延滞税や加算税がかかってしまいます。

この記事では、相続税の基礎控除や税額の計算方法、対象となる財産などについて詳しく解説します。

相続税の基礎控除とは

財産を相続したからといって、必ずしも全員に相続税がかかるわけではありません。

預貯金や土地などのプラスの財産から、債務や葬儀費用といったマイナスの財産を差し引いた金額が、基礎控除額を超える場合に、相続税の申告・納税が必要になります。基礎控除は、人によって控除額が異なります。

ここからは、基礎控除の計算方法を紹介します。

基礎控除の計算方法

基礎控除額の計算式は以下のとおりです。※1

3,000万円+600万円×法定相続人の数 

基礎控除額は、法定相続人の数によって異なります。

  • 法定相続人が2人の場合:3,000万円+600万円×2=4,200万円
  • 法定相続人が3人の場合:3,000万円+600万円×3=4,800万円

法定相続人が2人の場合は4,200万円まで、3人の場合は4,800万円までは相続税がかかりません。基礎控除額を超えると、超えた分だけが相続税の課税対象になります。

計算式からもわかるとおり、法定相続人の数が多いほど基礎控除額も多くなります。

法定相続人とは

法定相続人とは、民法で定められた相続人のことで、誰が該当するのかは、被相続者(財産を残す人)の家族構成によって異なります。

親族のうち、配偶者は常に法定相続人となります。この場合の配偶者とは、法律上婚姻していると認められる配偶者で、事実婚の場合や元配偶者は法定相続人には含まれません。

配偶者以外の相続人には順位があり、同じ順位の人が複数いる場合は、その全員が相続人となります。順位は以下のとおりです。

【第1順位:子】
子どもが死亡している場合は、孫が代襲相続人となります。代襲相続とは、本来の相続人である親がすでに死亡していた場合、子が代わりに財産相続できることを指します。また、養子も実子と同様に第1順位の法定相続人となりますが、養子の法定相続人の数には上限があります。

  • 被相続人に実子がいる場合:法定相続人となる養子の数は1人まで
  • 被相続人に実子がいない場合:法定相続人となる養子の数は2人まで

【第2順位:親】
第2順位は、第1順位がいない場合に相続人となります。親が死亡していて、祖父母が存命の場合は、祖父母が代襲相続人となります。

【第3順位:兄弟姉妹】
第1順位、第2順位がいない場合に相続人となります。兄弟姉妹が死亡している場合は、甥や姪が代襲相続人となります。

このような順位で法定相続人が決まりますが、相続を放棄した人がいたとしても基礎控除額は減りません。

例えば、法定相続人が3人いてそのうち1人が相続放棄したとしても、法定相続人は3人分として控除額の計算がおこなわれます。

相続税の計算方法

相続財産の価額が基礎控除額を超えると、相続税の申告をする必要があります。ここからは相続税の計算方法について解説します。

法定相続人それぞれの課税価格の計算方法

法定相続人それぞれの課税価格は次のように計算します。

相続または遺贈により取得した財産の価額 みなし相続等により取得した財産の価額  非課税財産の価額 相続時精算課税に係る贈与財産の価額 債務および葬儀費用の額 純資産価額(赤字のときは0)
純資産価額 相続開始前7年以内の生前贈与加算 100万円 各人の課税価格        

2024年1月1日から相続税および贈与税が改正されたことにより、生前贈与加算期間について、相続開始前7年以内(改正前は3年以内)に変更されました。また、延長された期間(4〜7年前)に贈与された財産については、100万円を控除した残額が加算されます。※2

①【相続開始日が2024年1月1日〜2026年12月31日まで】
 ・これまでと変わりなく、3年以内に贈与を受けた財産のみ加算

②【相続開始日が2027年1月1日〜2030年12月31日】
 ・3年以内の贈与加算に加えて、2024年1月1日以降に贈与を受けた財産のうち100万円を超える金額を加算

③【相続開始日が2031年1月1日〜】
 ・相続開始前3年以内の贈与財産に加え、4〜7年前の間に贈与を受けた財産のうち100万円を超える金額を加算

総額の計算方法

相続税の総額は、次のように計算します。

①法定相続人それぞれの課税価格を足して、課税価格の合計額を計算

②遺産の総額を計算
課税遺産総額=課税価格の合計額−基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)

③民法で定められている法定相続分にしたがって、各法定相続人の取得金額を計算
各法定相続人の取得金額=課税遺産総額×各法定相続人の法定相続分

④③で計算した金額に税率をかけて、それぞれの税額を算出
算出税額=各法定相続人の取得金額×税率

⑤④で算出した法定相続人ごとの算出税額を合計

このようにして相続税の総額を計算します。

相続税の対象になる財産の種類とは

現金や預貯金、土地や建物、株式や有価証券など、金銭に見積もることができる経済的価値のあるものすべてが相続税の対象となります。

また、死亡保険金や死亡退職金のように亡くなった際に支払われるものも、相続によって取得したとみなされ、みなし相続財産として相続税の対象となります。
これらには非課税枠があり、法定相続人の数×500万円までは非課税となります。※3

他にも、相続開始前7年以内(2024年法改正以前は3年以内)に贈与を受けた財産や、相続時精算課税制度を利用して贈与を受けた財産も相続税の対象となり、贈与時の価額で加算されます。

相続税の対象にはならない財産の種類とは

墓地や墓石、仏具、仏壇、国や地方公共団体、特定の公益法人に寄附した財産 などは相続税の対象にはなりません。また、被相続人の借入金や未入金、未払いの税金などの債務は、相続財産の価額から差し引くことができます。

葬儀費用も相続財産の価額から控除することができますが、墓地や墓碑などの購入費用、香典返し、法要の費用は控除の対象外になるため注意しましょう。

相続税の申告・納付の時期と方法

相続税の申告が必要な場合、被相続人が亡くなった日の翌日から10ヵ月目の日までに、被相続人の納税地を所轄する税務署に相続税の申告・納税をしなければなりません。※4

相続税の申告書や相続税の総額の計算書などの必要書類を、持参または郵送、e-Taxでの電子申告にて提出します。申告書の提出期限が遅れると、加算税や延滞税がかかってしまうため注意しましょう。

基礎控除以外に相続税に適用できる控除

基礎控除以外にも、以下のような控除を受けることができます。

配偶者の税額軽減

被相続者の配偶者が相続する遺産は、一定金額までは相続税が課されないという制度です。

金額の上限は、1億6,000万円もしくは配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額で、配偶者の税額軽減を受けるには、申告が必要となります。※5

未成年控除

相続人が未成年のときは、相続税の額から一定の金額を差し引くことができます。

未成年控除の額は、相続人が18歳になるまでの年数につき、10万円で計算します。
例えば、15歳9ヵ月で遺産を相続した場合、9ヵ月を切り捨てて15歳で計算するので(18歳−15歳)×10万円=30万円となります。※6

障害者控除

相続人が障害者のときは、相続税から一定の金額を差し引くことができます。

障害者控除の額は、相続人が満85歳になるまでの年数につき10万円で計算します。特別障害者の場合は、1年につき20万円となります。※7

相次相続控除

相続開始前10年以内に相続税を課された場合、相続税の負担が過重とならないよう、一定金額を控除する制度です。相次相続控除の額は、前回の相続において課税された相続税額のうち、1年につき10%逓減した金額です。※8

小規模住宅等の特例

被相続人が自宅として使っていた土地を、配偶者か被相続人と同居していた親族が相続する場合、評価額を最大80%まで減額することができます。※9

他にも被相続人が事業に使用していた土地や、貸付事業(アパート、マンションなど)として使用していた土地も、小規模住宅等の特例の対象となります。

まとめ

相続税は、基礎控除を超える価額の財産を相続すると発生します。基礎控除は、法定相続人の人数によって異なり、相続税の対象にはならない財産もあります。遺産を相続したからといって、必ずしも相続税が発生するわけではありませんが、正しく申告しないと延滞税や加算税がかかってしまうので注意しましょう。

また、家族や財産の状況によっては、基礎控除以外にも控除を受けることができる可能性もあるので、活用できるように正しく理解しておくことが大切です。

相続はいつ発生するかわからないので、いざというときのために正しい知識を身につけておきましょう。

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執筆者:尾崎 智恵梨(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)
監修者:辻本 剛士(1級ファイナンシャル・プランニング技能士)

上記は、2024年4月現在の税制・税率に基づき作成しております。
また、税制・税率は将来変更されることがあります。
なお、個別の取扱につきましては、お客さまご自身にて所轄の税務署または税理士にご確認ください。

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