※当記事は、ソニー生命から山口ファイナンシャル・プランニング技能士へ執筆を依頼し、原稿をソニー生命にて編集したものです。
老後を安心して過ごすためには、年金がいつから受け取れるのか知っておくことが大切です。年金は終身にわたって受け取ることができるため、老後生活を支える重要な柱です。
この記事では、年金の基本情報と年金の繰上げ・繰下げに関する利点・注意点について解説します。
将来のライフプランを設計するためには、年金を受給するタイミングを決めることは欠かせません。ライフプラン作成の参考にぜひお役立てください。
年金制度とは?仕組みの基礎知識!
年金は、高齢になったときや一定の障害状態に該当したときなどに支給される社会保障制度です。年金制度のなかでも、老後生活を支えるのは老齢年金です。
年金には、国が運営する公的年金や企業が独自におこなう企業年金、そして個人が自主的に加入する個人年金などがあります。
支給開始時期や受給条件は、制度や加入者の状況によって異なります。公的年金は終身にわたって支給されるため、老後生活を支える重要な収入源といえるでしょう。
受給できる年金の種類
公的年金として受給できる年金は、次の2種類です。(※1)
- 国民年金(20歳以上60歳未満のすべての人が加入)
- 厚生年金(会社員・公務員の人が加入)
以下で、それぞれの年金制度の特徴を解説します。
※1 参照:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
1.国民年金
国民年金は基礎年金とも呼ばれ、日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人は全員が国民年金に加入します。なお、国民年金には以下のように3つの種類があります。(※2)
第1号被保険者 | 自営業者やフリーランス、学生など |
第2号被保険者 | 会社員や公務員で厚生年金保険や共済組合に加入している人 |
第3号被保険者 | 厚生年金や共済組合に加入している人によって扶養されている配偶者 |
それぞれの被保険者種別によって、保険料の支払方法は異なります。
例えば、第1号被保険者は自分自身で納付する必要がありますが、第2号被保険者は勤務先を通じて天引きされるため自分で納付する必要がありません。
第3号被保険者は配偶者の厚生年金や共済組合が国民年金に必要な費用を負担しているため、自分自身で保険料を納める必要がありません。
※2 日本年金機構「国民年金はどのような人が加入するのですか。」
2.厚生年金
会社員や公務員として厚生年金保険に加入している70歳未満の人は、国籍や性別、年金の受給の有無に関わらず厚生年金保険の被保険者です。(※3)
厚生年金は、国民年金の上乗せとなる2階部分にあたります。厚生年金に加入している人は、国民年金だけでなく厚生年金も受給することが可能です。 厚生年金に加入している人は、勤務先を通じて国民年金保険料と厚生年金保険料をまとめて給料から天引きされます。
※3 参照:日本年金機構「適用事業所と被保険者」
年金はいつからもらえる?
現行の年金制度において、年金を受給するベースとなる年齢は65歳です。65歳になると、一定期間以上年金に加入している人は年金が支給されます。(※4)
なお、年金を受け取り始める年齢は60歳から75歳までの間で選択可能です。64歳以下から受給することを繰上げ受給と呼び、早くもらえる利点がある一方で、1ヵ月あたり0.4%の割合で65歳時点における年金額から減額される注意点があります。
66歳以降から受給することを繰下げ受給と呼び、受給できるタイミングを遅らせる一方で、1ヵ月あたり0.7%の割合で65歳時点における年金額から増額される利点があります。
このように、公的年金は受給できるタイミングを一定の範囲内で決定できる、柔軟な制度といえるでしょう。
※4 参照:日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」
もらえる年金額はいくら?
令和6年度にもらえる国民年金の金額例(満額の場合)は次のとおりです。(※5)
- 昭和31年4月2日以後生まれの人の場合:68,000円(月額)
- 昭和31年4月1日以前生まれの人の場合:67,808円(月額)
令和6年度にもらえる厚生年金(夫婦2人分の国民年金を含む標準的な年金額)の金額例は次のとおりです。(※6)
- 230,483円(月額)
国民年金の年金額が、昭和31年4月2日以後生まれの人と、昭和31年4月1日以前生まれの人で異なるのは、計算方法に違いがあるためです。
新規に年金を受給する場合、直近の賃金変動をもとに決定されます。
昭和31年4月2日以後生まれの人で新規に年金を受給する人の場合、賃金変動は2〜4年度前の3年間の平均から算出されます。(※7)
一方、昭和31年4月1日以前生まれの人で年金をすでに受給している場合、年金額の基準は物価の動きにより決定します。
※5 参照:日本年金機構「令和6年4月分からの年金額等について」
※6 平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。
※7 参照 日本年金機構「年金額はどのようなルールで改定されるのですか。」
年金受給開始を変更する利点とその方法
自分のライフスタイルに合わせて年金を受給すれば、老後生活における経済的な不安を軽減できます。
年金受給開始時期を変更する具体的な方法は、次の2つです。
- 年金の繰下げ受給
- 年金の繰上げ受給
順番に紹介します。
①年金の繰下げ受給
年金の繰下げ受給とは、66歳から75歳までの間で年金を受給開始することです。
繰下げ受給の利点は、年金支給額が増えることにあります。1ヵ月あたり0.7%の割合で65歳時点での年金が増額され、増額された年金は一生涯続きます。
昭和27年4月2日以降生まれの方は、 75歳まで繰下げれば最大で84%まで増額されるため、繰下げられる余裕がある人は繰下げ支給を検討しましょう。(※8)
※8 参照:日本年金機構「年金の繰下げ受給」
②年金の繰上げ受給
年金の繰上げ受給とは、60歳から64歳の間に年金を受給開始することです。早く年金を受給したい事情がある人は、繰上げ受給を検討するとよいでしょう。
ただし、繰上げ受給には注意点として、年金の受給開始を早めることにより年金額が減額される点が挙げられます。1ヵ月あたり0.4%(昭和37年4月1日以前生まれの人の減額率は0.5%)減額された年金額が生涯にわたって続くため、注意しましょう。(※9)
受給を開始して間もない頃は繰上げ受給が有利に見えますが、長生きすると65歳から受給したときと比べて受給額が減る可能性があります。
また繰上げ受給すると、寡婦年金や障害基礎年金を受け取れません。(※9)繰上げ受給には、利点だけでなく注意点があることに留意しましょう。
※9 参照:日本年金機構「年金の繰上げ受給」
年金に関連したよくある質問
最後に、年金に関するよくある質問に回答します。
年金はいつからもらうのが得?
長生きに備えるためには、繰下げられる余裕がある人は年金の支給開始を遅らせる方がよいもしれません。増額された年金が一生続くためです。一方で、寿命が短い場合は早めに年金をもらう方が、結果的よいということもあるでしょう。
また、厚生年金は生年月日によって、男女別に受け取れる年齢が異なる点にも留意が必要です。
厚生年金の加入期間が1年以上で老齢基礎年金の受給資格期間も満たしている場合は、60歳から64歳までの間、特別支給の老齢厚生年金を受けられます。
特別支給の老齢厚生年金においては定額部分の支給年齢が平成13年度から平成25年度にかけて、報酬比例部分が平成25年度から令和7年度にかけて、徐々に65歳へと引き上げられています。
ただし、女性は男性と比べてスケジュールが5年遅れである点に留意しておきましょう。(※10)
参考:特別支給の老齢厚生年金を受け取るための条件(※11)
- 男性の場合、昭和36年4月1日以前に生まれたこと
- 女性の場合、昭和41年4月1日以前に生まれたこと
- 老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があること
- 厚生年金保険などに1年以上加入していたこと
- 生年月日に応じた受給開始年齢に達していること
※10 参照:日本年金機構「厚生年金の受給開始年齢」
※11 参照:日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」
年金の繰上げ受給と繰下げ受給はどっちがいい?
現在所有している資産や今後のライフスタイルによって、どちらが適切かは変わります。
繰上げ受給をすると1ヵ月あたり0.4%または0.5%減額され、繰下げ受給をすると1ヵ月あたり0.7%増額します。(※12)
資産や生活に余裕があり、特段早く受給すべき事情がない場合、可能な限り繰下げ受給を検討するとよいかもしれません。
※12 参照:生命保険文化センター「老齢年金の繰上げ・繰下げ受給について知りたい」
繰上げ受給と繰下げ受給の割合は?
繰上げ受給と繰下げ受給をしている人の割合は、下表のとおりです。(※13)
国民年金 | 厚生年金 | |
繰上げ受給 | 27.0% | 0.6% |
繰下げ受給 | 1.8% | 1.2% |
繰下げ受給をしている人の割合は1~2%程度と低い水準です。
※13 参照:生命保険文化センター「老齢年金を繰上げ・繰下げ受給している人の割合はどれくらい?」(2021年度末時点)
まとめ
年金は基本的に65歳から受給でき、働き方によって年金額は異なります。
年金の受け取りは、必ずしも65歳から開始する必要はありません。繰上げ受給と繰下げ受給の仕組みがあり、60歳から75歳までの間で受け取るタイミングを選択できます。
公的年金は老後生活を支える柱です。どのようなライフスタイルを送るか、65歳時点における資産状況はどうなっているかなど、さまざまな要素を勘案した上で最適なタイミングで受給を開始しましょう。
ソニー生命のライフプランナーは、いつ年金を受け取り始めるかを含め人生100年時代を有意義に過ごすために、セカンドライフの計画についてもわかりやすくアドバイスをおこないます。
ぜひこの機会に、年金に関する準備・老後の計画を立ててみませんか。一人ひとりの疑問や不安にお応えします。
当資料は、2024年7月現在の社会保険制度に基づき作成しております。詳細につきましては、所轄の年金事務所等にご確認ください。
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