※当記事は、当社から金子CFP®認定者へ執筆を依頼し、原稿を当社で編集したものです。
退職金は、老後資金の原資となる大切なお金です。上手に運用して、老後の生活に役立てましょう。
退職金を運用する方法は複数ありますが、老後資金として活用するためには、ハイリスクな商品で運用するのではなく、長期的な目線でゆるやかに取り組むことがおすすめです。
退職金の代表的な運用方法や上手に運用するポイント、退職金運用に関する相談先などについて詳しくご紹介します。
退職金の使い道として資産運用がおすすめな理由
退職金の使い道のひとつに、資産運用があります。資産運用とは、資産を投資などによって運用して効率よく増やしていくことを目指すことです。銀行などの預貯金も広義の資産運用に含まれますが、ここでは金融商品を購入して運用することを資産運用と呼ぶことにします。
退職金はまとまった金額ですから、計画的に活用することが大切です。住宅ローンの繰上返済やリフォームなど、必要な資金を捻出した後は、一部を運用に回すことも検討してみましょう。
まずは、退職金の使い道として資産運用をおすすめできる主な理由をご紹介します。
退職後の人生が長い
退職金を資産運用に活用することがおすすめできる理由のひとつは、退職後の人生が長いことです。
資産の積み立て期と取り崩し期のイメージ
上の図は、就職から退職まで、給与などによって資産を形成する時期を「積み立て期」、退職後の資産を取り崩す期間を「取り崩し期」とした場合の長さのイメージです。
日本人の平均寿命は、男性81.05歳、女性87.09歳です。また、65歳時点の平均余命で見ると、男性は19.44年、女性は24.3年です(令和4年簡易生命表、厚生労働省調べ)。22歳で就職して65歳で退職するまでには43年間ありますが、退職から平均余命まで生きる場合は20~25年間と、それまでの約半分ほどにも及びます。
この間の生活費は、年金とそれまでの預貯金、退職金などでまかなうことになります。仮に預貯金が1,000万円、退職金が1,000万円あり、そのうち500万円を自宅のリフォームで使うと、残りは1,500万円です。まとまった金額のようですが、これを25年間で取り崩すとすると、1ヵ月5万円しか使えないことになります。また、取り崩しがいつまでできるかは誰にもわかりません。
運用を行いながら取り崩すことで、資産が尽きるタイミングを遅らせることができます。
老後は収入源が少なくなる
老後は、年金以外の収入がなくなる方が多いでしょう。再雇用などで働き続けるとしても、現役時代ほどの収入を見込むことは難しい傾向があります。そうなると、それまでと同様の生活を維持するのが困難になります。
年金受給額の範囲で生活することが難しい場合は、預貯金などで準備するか、プラスアルファの収入源を用意する必要があります。
退職金の運用によって資産を増やすことは、新たな収入源を作る選択肢のひとつです。
インフレなどのリスクがある
退職金を運用することは、インフレなどのリスクを避けるうえでもおすすめといえます。
日本の年金制度は物価の変動をある程度反映しますが、同時に将来の人口増減なども加味されています。急激なインフレが起こった場合、年金の上昇幅が追いつかず、生活の維持が難しくなるかもしれません。
退職金を効果的に運用することで、インフレリスクにもある程度対応することが期待できます。
退職金の代表的な運用方法
退職金は、さまざまな方法で運用できます。とはいえ、あまりハイリスクな投資をすると大切な退職金が目減りしてしまうおそれがありますから、気をつけなければいけません。代表的な運用方法は下記のとおりです。
投資信託
投資信託の購入は、退職金の運用方法としておすすめです。投資信託とは、投資家から集めた資金を運用のプロであるファンドマネージャーが運用して、運用によって得た利益を投資家に分配する投資商品です。
投資信託なら、100円などの少額でも購入できますし、継続的な積立形式で購入することも可能です。複数の投資先に投資をおこなうことから、分散投資にもなるでしょう。
ただし、元本保証はありません。また、証券会社や購入銘柄に応じた手数料がかかります。
ファンドラップ
退職金の運用を検討する際は、ファンドラップも選択肢のひとつになります。
ファンドラップは、証券会社などの専門家が顧客の資産運用に関する意向をヒアリングし、適したポートフォリオを組んで代理で運用をおこなう投資手法です。
自分自身で投資商品を選ぶ必要がないため、投資初心者でも利用できます。運用をプロに任せられる点がメリットですが、その分手数料がかかります。
株式投資
退職金はまとまった資金ですので、株式投資で運用することもおすすめです。
株式投資とは、株式会社が発行する株式を購入する投資手法です。株式を保有していると配当金や株主優待などを受け取れることがあるほか、値上がりしたタイミングで売却すれば売却益を得られます。
ただし、日本株は基本的には100株単位で売買されるため、株式投資をする際はある程度まとまった資金が必要です。また、株価は随時変動し、元本保証もないため、損失をこうむる可能性があることは、株式投資の注意点といえます。
株式投資で退職金を運用する際は、許容できるリスクの範囲内でおこなうことが大切です。
個人向け国債
個人向け国債とは国が発行している債券のことで、退職金の運用方法のひとつです。1万円から購入できて、基本的に元本割れすることはありません。「当面使う予定のないお金があるが、リスクのある金融商品は抵抗がある」という場合に検討してみましょう。
ただし、金利はほかの金融商品に比べて低い傾向があります。個人向け国債の最新の金利は、取扱金融機関で確認してください。
また、購入から1年間は原則として中途換金ができません。あくまでも余剰資金での運用に適した方法です。
円定期預金
円定期預金とは、決められた期日まで引き出せない預金のことで、普通預金よりも金利が高く設定されているため、退職金の代表的な運用方法の一つです。
預金金利は銀行によって異なりますから、高金利の銀行に預けておけば利息を得やすくなるでしょう。
不動産投資信託
不動産投資信託(REIT)は、投資家から集めたお金で不動産に投資し、利益を分配する投資信託です。日本の不動産投資信託は「J-REIT」と呼ばれます。投資信託と同様の仕組みで運用される金融商品で、退職金の代表的な運用方法の一つです。
アパート経営などの不動産投資は多額の初期費用や管理費用などが必要ですが、不動産投資信託であれば、少額から不動産に投資できます。また、1つの不動産投資信託を購入することで複数の物件に投資できるため、天災などのリスクも抑えやすいといえるでしょう。ただし、元本保証ではありませんし、手数料がかかる点にも注意が必要です。
退職金を上手に運用するポイント
続いては、退職金を上手に運用するために、押さえておきたいポイントを紹介します。老後のお金に関する不安を払拭するための参考にしてください。
ライフプランに沿った計画を立てる
ライフプランに沿った計画を立てることは、退職金運用のポイントです。老後、どのようなライフプランを持っているかによって、必要な資金が変わります。自分とご家族の希望に沿った資金計画を立てましょう。
「毎年1回旅行に行きたい」「◯年後にリフォームの予定がある」「孫の学校入学時にお祝いをする」など、日々の生活費のほかに必要な資金も含めて、いつ、いくらいるのかがわかるライフプラン表を作成して、必要なお金を可視化してみてください。
長期で運用する
老後は、何十年も続く可能性のある長いものです。退職金の運用は、長期でおこなうことがポイントになります。そのためにも、当座で必要な資金は投資資金とは別にしておく必要があります。
積立投資をする
退職金は一括で使用せず、コツコツと積み立てて運用することが大切です。
金融商品の価格は日々変動しています。退職金を一括で使い金融商品を購入しても、その商品の価格が下落し続ければ、持ち直して利益が出るまでに多くの時間がかかるかもしれません。毎月一定額を購入し続ける積立形式であれば、購入価格が平準化され、利益も出やすくなります。
投資先を分散させる
投資先を1つに絞らずに分散させることは、退職金を上手に運用するポイントです。投資対象を分散させれば、1つの金融商品の価格が下落しても、別の金融商品の価格が上昇してバランスを保てる可能性があります。「投資する地域」「投資するタイミング」「投資する商品」などで分散をすることがおすすめです。
リスク許容度の範囲内で運用する
リスク許容度の範囲内で運用することも、大切なポイントです。リスク許容度とは、それぞれの人がどの程度リスクを受け入れられるかの度合いを指します。「資産は絶対に減らしたくない」という方と「資産が10%目減りしても耐えられる」という方、「資産が50%目減りしても耐えられる」という方では、それぞれ適した運用方法が異なります。自分とご家族の資産状況や考え方に応じた投資をおこなうことが大切です。
NISAを利用する
NISAとは「少額投資非課税制度」のことで、投資で得た利益が非課税になる制度です。投資信託や株式投資、REITなどはNISA口座での売買が可能ですから、積極的に活用してください。
退職金を運用する際の注意点
退職金の運用には、注意点もあります。退職金は大切な老後資金の一部です。下記に注意して運用を行ってください。
短期的な成果を得るのは難しい
退職金は、長期目線で少しずつ資産を取り崩しながら長く運用するのがおすすめです。短期的な成果を得るのは難しいかもしれませんが、焦らずじっくり取り組みましょう。
短期的な成果を追い求めすぎると損失につながることもあるので、気をつけてください。
リスク許容度の範囲内で運用する
退職金の運用は、リスク許容度を超えないようにしましょう。リスク許容度の範囲内でおこなうことで、安定的な運用ができます。
リスク許容度は、全体の資産額や運用に利用できる金額、今後必要となるお金の額、本人のスタンスなどによって異なります。自分のリスク許容度を見極め、あくまでその範囲内で運用をすることが大切です。
1つの金融商品に一括投資しない
資産運用を上手におこなうには、1つの金融商品に一括投資しないことが大切です。退職金を1つの金融商品の購入にあててしまうと、該当の商品が値下がりした際に大きな損失につながりかねません。さまざまな商品に投資して、リスクを分散させましょう。
手取額が想定より低くなる可能性がある
退職金には税金がかかる場合があるため注意が必要です。通常、退職金には所得税や住民税がかかりますが、勤続年数に応じた控除額の範囲内に収まれば税金を支払う必要がなくなります。反対に、退職金が高額になるほど多くの税金が引かれてしまって、手取額が期待ほど大きくないおそれもあるのです。
退職金の受取額を考える際は、税金も考慮しておくことをおすすめします。退職金にかかる税金の計算方法は、国税庁の「退職金と税」で調べることができますので、確認してみてください。
退職金の運用に関する相談先
「退職金の運用方法を、自分や家族だけで決めるのは不安」という方は、専門機関に相談してみるといいでしょう。退職金の運用に関する主な相談先は下記のとおりです。
銀行
銀行は、退職金の運用について気軽に相談できる金融機関です。退職者向けの相談窓口や金融商品などを設けていることもあります。
一方で、金融商品の取扱数は、一般的に銀行よりも証券会社のほうが豊富です。銀行だけで投資先を決めてしまわずに、複数を比較検討するのがおすすめです。
証券会社
証券会社では、主に投資信託や株式、REITといった金融商品の運用相談ができます。対面式の相談窓口を用意している証券会社もあるため、確認してみましょう。
保険会社
保険会社では、さまざまな保険商品について相談できます。保険金の受取シミュレーションや、目的に応じた保険商品の案内などをしてもらえます。
ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー(FP:Financial Planner)には、家計管理や資産形成などの相談ができます。家計の状況を総合的に見たうえで、資産運用全般の相談にのってもらえます。
通常、個別の金融商品の提案などは行いません。ただし、銀行や証券会社などに勤務するファイナンシャルプランナーの資格を有する職員は、自社製品の案内をおこなうことがあります。
IFA
IFAとは、独立系ファイナンシャルアドバイザー(Independent Financial Advisor)のことです。ファイナンシャルプランナーと似ていますが、具体的な投資のアドバイスや金融商品の紹介などをおこなう点が異なります。証券会社などに属していないため、中立的な立ち位置からのアドバイスをもらえます。
退職金の運用に関するよくある質問
退職金の運用については、わからないことも多いはずです。退職金の運用に関するよくある質問と答えをまとめましたので、参考にしてください。
退職金運用でよくある失敗例は何ですか?
退職金の運用でよくある失敗としては、「1つの資産に一括投資する」「ハイリスクな金融商品に投資する」などが挙げられます。
1つの資産とは、特定の不動産物件や、特定の株式銘柄などが該当します。1つの資産に退職金を一括投資した場合、該当の投資商品の価格が下落したときに大きな損失につながりますので、分散投資を心掛けましょう。
また、ハイリスクな金融商品や、手数料が高額で利益の出にくい金融商品への投資にも注意が必要です。退職後も人生は長く続きますが、20代や30代とは残りの期間が異なります。ゆるやかに取り崩しながら資産寿命を延ばしていく投資を目指すのがおすすめです。
退職金運用は「老後2,000万円問題」に有効ですか?
退職金運用は、退職金の金額が2,000万円に満たない場合の老後資金対策に一定の効果を発揮すると考えられます。
仮に、退職金を毎月5万円ずつ積み立てて、年利5.0%で運用すると、20年後には投資金額合計1,200万円、積立金額は2,000万円を超えます(金融庁の資産運用シミュレーションによる)。
実際に2,000万円で老後資金が足りるかどうかは、それぞれの方の暮らし方などによって変わりますが、「老後資金が退職金だけでは心もとない」という方にとって、運用は解決策のひとつになるでしょう。
ただし、退職金の運用方法には元本が保証されないものも多くあります。元本保証の商品である程度の手元資金を確保しておくことも大切です。
代表的な退職金運用方法は何ですか?
代表的な退職金の運用方法は下記のとおりです。
<元本保証の金融商品>
- 個人向け国債
- 円定期預金
<元本保証ではない金融商品>
- 投資信託
- ファンドラップ
- 株式投資
- 不動産投資信託
退職金を運用する際は、元本が保証される金融商品と、元本保証ではないものの一定の利益を期待できる金融商品を、リスク許容度に応じて組み合わせることをおすすめします。
退職金運用に関する相談は、どこにしたらいいですか?
退職金の運用に関する相談先は複数あります。希望する運用方法に応じて、株式や投資信託なら証券会社、保険商品なら保険会社、国債なら国債を取り扱う銀行や証券会社などに相談するのがいいでしょう。
また、総合的な家計管理やライフプランに関してはファイナンシャルプランナー、総合的な運用はIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)への相談が適しています。
ただし、資産運用について相談する際は、特徴にばかり目を向けず、注意すべき点も知って冷静に比較検討するように留意してください。
退職金運用はどれくらいの期間で考えるべきですか?
退職金の運用期間は、ライフプランや資産状況に応じて変わります。とはいえ、65歳で退職した場合、その後の平均余命は男性19.44年、女性24.3年です(令和4年簡易生命表、厚生労働省調べ)。老後の人生は20~25年程度続く可能性があるため、長期的な視点で考えるのがおすすめです。
長期的な視点で運用を行いながら必要に応じて取り崩したり、現金化したりしていくことで、資産を有効活用していくことを考えてみてはいかがでしょうか。
退職金を上手に運用し、第二の人生を豊かに
老後の生活を豊かなものにするためには、お金の不安を払拭し、安定した生活基盤を築くことが大切です。退職金を上手に運用して、手元の資産をできるだけ長く活用しましょう。
まとまった退職金が入ったからといってすぐに投資先や使い道を決めてしまわずに、ご家族とも相談しながら、ライフプランに合った投資先を慎重に検討することをおすすめします。
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監修者:金子 賢司(CFP®認定者)
※当記事はお金にまつわる幅広い情報をまとめています。当記事のコンテンツのなかには、当社で取り扱いのない商品・サービスを含んでいるものもございます。この点、充分にご留意のうえ、ご覧ください。
※当資料は、2024年8月現在の税制・税率に基づき作成しております。また、税制・税率は将来変更されることがあります。なお、個別の取扱いにつきましては、お客さまご自身にて所轄の税務署または税理士にご確認ください。