主婦(主夫)がiDeCo(イデコ)に加入するメリット・デメリットを解説

「収入のない主婦(主夫)でもiDeCo(イデコ)に加入した方がいいの?」「公的年金にプラスとなる自分名義の退職金(老後資金)を確保したい」。本記事ではこのようなお悩みを解決します。
日本政府は、自助努力による資産形成を促す観点から、2017年1月から専業主婦(主夫)の方もiDeCoに加入できるようにしました。2022年度の公的年金支給額が0.4%の引き下げとなるなか、iDeCoを含む「私的年金」が注目を集めています。
本記事を読むことで、主婦(主夫)がiDeCoをするときのメリットや注意点を理解することができます。ぜひ、本記事を読んで、ご自身に最適な資産形成を検討してみてください。

公開日:2022年6月30日
更新日:2023年2月16日

主婦(主夫)がiDeCo(イデコ)に加入するメリット

主婦(主夫)がiDeCoに加入するメリットは、大きく下記の2点です。

  • 60歳以降の資金として貯蓄(自分名義の退職金/年金の確保)
  • 税制上の優遇措置

iDeCoの利用を検討されている主婦(主夫)の方、特にこれから資産運用を始めようという方にとって、メリットを正しく理解することは重要です。順番に解説します。

自分名義の退職金・年金が形成できる

1つ目のメリットは、自分名義の退職金・年金が形成できる点です。厚生年金や退職金が無い専業主婦(主夫)の方にとって、自分名義の資産となるiDeCoの存在は大きいといえます。

iDeCoの場合、運用管理機関(金融機関)が提供している運用商品の中から、運用方針に沿うものを自分自身で選択する必要があります。「自分で拠出」して、「自分で運用」して、最後は「自分で退職金・年金として受け取る」、まさに自分のための自分年金といえます。

受取時に税制優遇が受けられる

2つ目のメリットは、受取時に税制優遇が受けられることです。専業主婦(主夫)には収入がないため、所得控除の恩恵は受けられません。

一方で、運用益は非課税となるメリットがあり、受取時の税制優遇は受けられる可能性が高いでしょう。なぜなら、専業主婦(主夫)は退職金を受け取らないので、退職金控除1,500万円が満額利用できる可能性が大きいためです。

専業主婦(主夫)におけるiDeCoの税制上の優遇措置については後述いたします。

iDeCo・資産形成について詳しく知りたい方はこちら

主婦(主夫)がiDeCo(イデコ)に加入するデメリット

主婦(主夫)がiDeCoへ加入するメリットは大きいですが、念のためデメリットも理解しておきましょう。主婦(主夫)がiDeCoに加入するデメリットは、大きく分けて下記の2つです。

  • 収入がない場合、所得控除の恩恵を受けられない
  • 家計の負担が大きくなる

後述のNISAとの比較の際でもポイントとなりますので、しっかりと確認しておきましょう。それぞれ順番に解説します。

収入がない場合、所得控除の恩恵を受けられない

iDeCoへ加入する大きなメリットとして、「掛金が全額所得控除」となる点が挙げられます。しかし、所得がない場合は、その恩恵を受けることができません。

税制優遇で控除されるのは所得税や住民税を計算する際の所得控除となるため、収入が一定以下、または無収入だと控除される所得がないためです。

ただ、デメリットとして挙げているものの、マイナスになるものではなく、プラスを受けられないといった類のものであるため、人によってはそれほどシビアにならなくても問題ないポイントになります。

家計への負担が大きくなる

デメリットの2つ目は、iDeCoを拠出する場合、家計への負担が大きくなってしまうことです。

iDeCoで拠出した掛金は、60歳までは原則引き出せないため、子どもの教育資金形成や、家や車のローンの返済などに影響が及ばないように計画する必要があります。

iDeCoや教育資金、ローン返済等の金額をあらかじめ確保し、無理のない掛金を設定することが重要です。

掛金拠出の休止、再開はいつでも可能で、1年に1回は掛金の額を変更できますので、支出の予定とあわせて上手にiDeCoを取り入れてみることをおすすめします。

「iDeCoのメリット・デメリット」について詳しく見る

主婦(主夫)はiDeCo(イデコ)とNISAどちらがおすすめ?

初心者向けの資産形成方法としてNISAがあります。NISAとは、2014年1月にスタートした、個人投資家のための税制優遇制度です。

NISAでは毎年の非課税投資枠が設定され、株式投資信託・上場株式等の配当・譲渡益等が非課税対象となります。たとえば株式投資信託に投資した場合、「値上がり益」と「普通分配金」が非課税になります。

ここでは、主婦(主夫)にとって、iDeCoとNISAのどちらがおすすめか、考察します。

iDeCo(イデコ)がおすすめな人

自分名義の老後資金・退職金を形成したいなら、受取時に税制優遇が受けられるiDeCoがおすすめといえるでしょう。退職金としてiDeCoを受け取る場合、主婦(主夫)の方は、企業年金など他の退職金を受給していない事が多く、退職金控除を丸ごと利用できる可能性が高いです。

退職金控除の金額(非課税枠)は下記のとおりです。

  • 掛金を払い込んだ期間が20年まで:年間40万円
    たとえば、掛金を払い込んだ期間が20年間だと、
    退職所得控除額は20年×40万円=計800万
  • 掛金を払い込んだ期間が20年を超える:年間70万円
    たとえば、掛金を払い込んだ期間が30年間だと800万円(20年間分)に、
    さらに10年×70万円=700万円を加えて計1500万円

老後資金以外に大きな心配がない方は、60歳まで引き出せないiDeCoをあえて選択するのもおすすめです。

NISA(ニーサ)がおすすめな人

60歳前にいつでも売却し、現金として引き出したいのならNISAがおすすめです。iDeCoの最大のデメリットは60歳まで引き出せないことですが、NISAであればいつでも引き出し可能です。

NISAには一般NISAとつみたてNISAの2種類があります。毎年120万円の非課税投資枠を上限とし最長5年間、最大600万円までの投資から得た利益が非課税となるのが一般NISA、一方で、毎年40万円の非課税投資枠を上限とし最長20年間、最大800万円までの投資から得た利益が非課税となるのが、つみたてNISAです。

まとまった資金を一括で運用したい人には一般NISAがよいでしょう。長期的な運用を見据えて計画的に老後資金を貯めたい人には、つみたてNISAがおすすめです。ただし、一般NISAとつみたてNISAの併用はできず、どちらかを選ぶことになります。

iDeCo(イデコ)とNISAの併用がおすすめな人

iDeCoとNISAにはそれぞれメリット・デメリットがあるので、両方の良い面を活かし併用することがおすすめです。特に下記のような方は、併用を検討する価値が充分あるでしょう。

  • それぞれの税制上の優遇措置を存分に活かしたい人
  • 余剰資金があり、複数の運用先を検討している人

iDeCoとNISAは税制上の優遇措置があり、共に資産形成の王道といえます。ただし、どちらの制度にも非課税枠に上限がありますので、片方では充分といえないケースもあるでしょう。その場合は、2つを上手に活用することをおすすめします。

主婦(主夫)の働き方別|iDeCo(イデコ)の税制メリット

ここからは、主婦(主婦)の働き方別にiDeCoの税制メリットについて解説します。

iDeCoの税制メリットは「所得控除」「運用益の非課税」「退職所得控除」の3つです。働き方別にこれらのメリットをどの程度受けることができるのかを簡単にまとめると、下記のようになります。

働き方 受けられる税制メリット
専業主婦(主夫) 運用益の非課税・退職所得控除が受けられる
パート
(年収100万未満)
パート
(社会保険加入対象)
所得控除・運用益の非課税・退職所得控除が受けられる

それぞれの項目について具体的に解説していきます。

専業主婦(主夫)の場合

まずは専業主婦(主夫)の場合です。

所得控除

収入がない専業主婦(主夫)は所得税や住民税がかからないため、所得控除を受けることはできません。

運用益

専業主婦(主夫)の場合、加入上限金額は2.3万円です。仮に30歳から60歳まで、2.3万円を年率5%で運用した場合、下記のような実績になります。

項目 金額
積立元金 8,280,000円
合計金額 19,141,949円
運用益 10,861,949円

退職所得控除

専業主婦(主夫)の場合でも、iDeCoを一時金で受け取る場合は税務上「退職所得」となります。上記の場合、受取時の所得税額は以下のとおりとなり、受取時に税制メリットが受けられます。

課税対象金額=(一時金額-退職所得控除額)×1/2
退職所得控除額(40万円×20年間)+(70万円×10年間)=15,000,000円
課税対象金額 2,070,974円(円未満切捨)
所得税額 109,597円(円未満切捨)

その他控除や所得によって変動するため1つの目安として考えましょう。

パートで働いている主婦(主夫)の場合|年収100万円未満

次にパートで働いている主婦(主夫)について解説します。まずは年収100万円未満のケースです。

所得控除

年収100万円未満の場合だと、所得控除のメリットを受けることはできません。

iDeCoの加入により受けられる所得控除は「所得税」と「住民税」が対象になります。しかし、住民税を負担する条件は年収100万円以上(東京都の場合)であり、所得税は年収103万円以上です。つまり、所得税も住民税も課税対象とならないため控除も発生しません。

参照:東京都主税局「個人住民税」

運用益

年収100万円未満の場合も加入上限金額は専業主婦の場合と同額になるため、専業主婦と同様の運用益の非課税メリットを受けられます。

退職所得控除

退職所得控除についても、専業主婦と同じく加入期間に応じた退職所得控除を活用することが可能です。

ただし、勤務先の職場から退職金が支払われる場合、退職金額とiDeCoの一時金の金額を合わせた金額が退職所得の対象となるため注意しましょう。

パートで働いている主婦(主夫)の場合|年収100万円未満

最後は、パートで働いている主婦(主夫)で社会保険加入対象者の場合です。パートでも、従業員数100人超(101人以上)規模の場合、下記の条件をすべて満たせば社会保険の加入対象になります。

  • 所定労働時間が週20時間以上30時間未満
  • 月額賃金が8.8万円以上
  • 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない

このような場合、iDeCoの加入にすることでどのようなメリットがあるのかを説明します。

所得控除

配偶者の扶養に入っていない場合、社会保険加入対象者は所得税・住民税を負担する必要があるので、iDeCoを活用することで所得控除のメリットが受けられます。

なお、iDeCoの掛金は全額所得控除となるため、iDeCoに加入することで所得税の節税が可能になるケースもあります。例えば、以下のようなケースです。

項目 iDeCo加入前 iDeCo加入後(掛金月額2.3万円)
例)
年収128万円のケース
給与所得控除 55万円
基礎控除   48万円
課税所得   25万円
所得税額   1.25万円
給与所得控除 55万円
基礎控除   48万円
iDeCo掛金  27.6万円
(全額所得控除)
課税所得   0円
所得税額   0円

このように、掛金を工夫することで所得税の負担を抑えることも可能です。

参照:国税庁「No.1199 基礎控除」

運用益

専業主婦の場合と同じく、運用益非課税のメリットを受けられますが、加入できる上限金額については注意が必要です。

社会保険に加入していない場合は他の専業主婦の場合と同じく、月額2.3万円が上限となります。ただ、社会保険に加入している場合は勤務先の会社の年金制度によって上限金額がかわる場合があります。社会保険に加入している場合は勤務先の年金制度を確認しましょう。

退職所得控除

退職所得控除についても活用できますが、勤務先から退職金を受け取る場合はiDeCoの一時金と退職金とが合算されて退職所得の課税対象になります。

専業主婦でも運用益非課税と退職所得控除によるメリットが期待できます。まだiDeCoを活用していない方は検討してみてはいかがでしょうか。

主婦(主夫)がiDeCo(イデコ)に加入するメリットはある

主婦(主夫)の方で配偶者の扶養に入っている場合、一般的には所得税・住民税を直接払い込んでいないので、所得控除の恩恵が受けられません。

しかし、運用益が非課税になることに加え、受取時に退職所得控除が全額利用できる可能性が極めて高いといえます。iDeCoを活用すれば、専業主婦(主夫)も自分名義の退職金(老後資金)を準備できるので、ぜひ積極的に利用してみてはいかがでしょうか。

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ソニー生命では、「個人型DC(iDeCo)」を取り扱っており、加入手続の方法から、掛金設定・運用までサポートします。

生命保険・金融のプロフェッショナルであるライフプランナーが、1対1で徹底的にサポートするので、一人で進めるのが不安という方にもおすすめです。

iDeCoや老後資金、家計・保険について少しでも悩みがある方は、まずは無料相談をお申し込みください。

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当資料は、2022年10月現在の情報に基づき作成しております。制度・税制は将来変更されることがありますので、ご注意ください。また個別の税務に関する取扱については、税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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