サラリーマンが受けられる控除一覧|会社設立の際の注意点などもあわせて解説

サラリーマンの方は、多くの場合、確定申告をせずに年末調整だけで所得税の申告が済むため、控除を含めた税制優遇制度にあまり関心のない方もいるでしょう。

実は、サラリーマンが受けられる税制優遇制度は多数あります。

本記事では、サラリーマンが受けられる税制優遇制度について解説します。控除・控除以外の制度・副業として会社を設立する際の注意点についても紹介するため、税制優遇制度に興味のある方はぜひ参考にしてください。

公開日:2022年09月14日
更新日:2023年04月21日

サラリーマンが受けられる控除一覧

サラリーマンが受けられる控除には、基礎控除・社会保険料控除・配偶者控除などさまざまなものがあります。

ここでは、次の5つの控除について詳しく解説します。

  • 給与所得控除
  • 生命保険料控除
  • 医療費控除
  • 住宅ローン控除
  • 特定支出控除

併せて控除の計算式も紹介しますので、参考にしてみてください。

給与所得控除

給与所得控除は、会社員・アルバイト・パートなど、企業から給与を受け取る給与所得者が受けられる制度です。1年間の給与収入額に応じて一定額を控除できます。

自営業者をはじめとした事業所得者は、所得税を算出する際に収入金額から必要経費を差し引いて計算しています。給与所得者は、給与所得控除を経費分として差し引く制度が導入されています。

似た名称を持つ「所得控除」という言葉があります。所得控除は15種類あり、詳細は次のとおりです。

  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 寡婦控除
  • ひとり親控除
  • 勤労学生控除
  • 障害者控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 基礎控除
  • 雑損控除
  • 医療費控除
  • 寄附金控除

所得控除は本人や家族の個人的な事情に配慮して税負担の軽減を行うもので、「給与所得控除」とは異なります。

なお、所得控除のうち「雑損控除」「医療費控除」「寄附金控除」の3つは年末調整では対応できません。この3つの所得控除を行いたい場合は、確定申告が必要になります。

参照:国税庁「タックスアンサー|No.1410 給与所得控除」

給与所得控除額の計算式

給与所得控除額は給与等の収入金額によって異なります。2020年分以降の控除額は次のとおりです。

給与等の収入金額 給与所得控除額
162.5万円まで 55万円
162.5万1円~180万円 収入金額×40%−10万円
180万1円~360万円 収入金額×30%+8万円
360万1円~660万円 収入金額×20%+44万円
660万1円~850万円 収入金額×10%+110万円
850万1円以上 195万円(上限)

給与等の収入金額は、源泉徴収票内の「支払金額」で確認できます。

生命保険料控除

生命保険控除は払い込んだ生命保険料に応じて税負担が軽減される仕組みです。一定の金額が契約者のその年の課税対象となる所得金額から差し引かれます。

生命保険料控除では所得税と住民税を限度額まで軽減できます。なお、旧制度と新制度では取扱が異なるので注意が必要です。

生命保険料控除の計算式

生命保険料は2012年1月1日以降に締結した新契約と、それ以前に締結した旧契約とでは計算方法が異なります。ここでは、新契約の計算式を紹介します。

支払保険料等(年間) 控除額
2万円以下 支払保険料等の全額
2万円超4万円以下 支払保険料等×1/2+1万円
4万円超8万円以下 支払保険料等×1/4+2万円
8万円超 一律4万円

新契約である「新生命保険料」「介護医療保険料」「新個人年金保険料」と旧契約の「旧生命保険料」「旧個人年金保険料」は、それぞれの控除額の合計が控除可能です。控除額の合計は最大で12万円までとなります。

生命保険料控除を受けるには、各保険会社が発行する「保険料控除証明書」の添付が必要です。

参照:国税庁「タックスアンサー|No.1140 生命保険料控除」

医療費控除

医療費控除は1年間に10万円超の医療費を支払った場合に受けられる所得控除です。控除額は最高で200万円です。

医療費控除については特別な申請書が必要というわけではありません。「確定申告書」に「医療費控除の明細書」を添付して税務署に提出すれば申請可能です。

個人事業主だけでなく、サラリーマンであっても、確定申告で医療費控除を申請することで、納めた税金の一部を還付金として受け取れるケースがあります。医療費には、納税者が自己または自己と生計を一にする配偶者や、その他の親族のために支払ったものが含まれます。

医療費控除の計算式

医療費控除の計算式は次のとおりです。

  • (その年に支払った医療費の総額-保険金などで補填される総額)-10万円※=医療費控除額(最高200万円)

※所得の合計額が200万円までの場合、所得合計額の5%

医療費控除を受ける際は、計算の根拠となる領収書を自宅で5年間保存しておかなければなりません。

参照:国税庁「令和4年分確定申告特集|医療費控除を受ける方へ」

住宅ローン控除

住宅ローン控除は一定の条件のローンを組んでマイホームを購入・建築したり、省エネやバリアフリー等の特定の改修工事をしたりすると、年末のローンの残高に応じて税金が軽減される制度です。

住宅ローン控除では所得税で控除しきれない分は住民税からも一部控除されますが、適用を受けるにはさまざまな要件があります。

適用年数は原則として10年間ですが、消費税率10%が適用される住宅の取得を行い、一定の期間内に契約を締結した場合は13年間となります。控除額はローン残高の1%です。

ただし、2022年より、適用年数は原則13年間、控除額はローン残高の0.7%になるなど、制度が変更されています。

住宅ローン控除の計算式

2022年以降の住宅ローン控除の計算式は次のとおりです。

  • 年末の住宅ローン残高×0.7%=住宅ローン控除額

なお、住宅ローン減税の対象となる借入限度額は、住宅の環境性能や入居年により異なるため、事前に確認しましょう。

参照:国土交通省「住宅|住宅ローン減税」

特定支出控除

特定支出控除は特定支出の額の合計金額が「給与所得控除額の2分の1」を超える場合に、その超える部分に関して、確定申告を通じて給与所得の金額の計算上控除することができる制度です。

給与所得控除額の2分の1については、最高で125万円までとなっています。

特定支出の具体例としては、一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出(通勤費)などが挙げられます。

特定支出控除を利用するためには、確定申告書等にその適用を受ける特定支出の額の合計額を記載し、特定支出に関する明細書と給与等の支払者の証明書の両方を提出する必要があります。

特定支出控除の計算式

特定支出控除額として判定される金額は、給与所得控除額の2分の1を超えた額となります。

  • その年中の特定支出の合計額-給与所得控除額の2分の1=特定支出控除額

特定支出控除は年末調整では控除できません。確定申告が必要です。

参照:国税庁「別冊 令和2年分以後の所得税に適用される給与所得者の特定支出の控除の 特例の概要等について(情報)」

資産形成について詳しく知りたい方はこちら

サラリーマンが使える控除以外の税制優遇制度

サラリーマンが利用できる税制優遇制度は控除だけではありません。ここからは、それ以外の税制優遇制度について解説します。

  • ふるさと納税
  • iDeCo(イデコ)
  • NISA(ニーサ)

上記の制度を必要に応じて活用すると、税制優遇が受けられます。

ふるさと納税

ふるさと納税には「納税」という呼称がついていますが、正確には都道府県や市区町村への寄附です。ふるさと納税では、自分が応援したい自治体に寄附ができます。

ふるさと納税では、原則として、寄附額から2,000円を差し引いた金額が控除の対象となります。ふるさと納税で寄附すると、その自治体の特産品・名産品などが感謝の印として、贈られてきます。

→「ふるさと納税のメリット」について詳しく見る

iDeCo(イデコ)

iDeCo(イデコ)は確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の制度です。掛金、運用益、そして給付を受け取る3つの時点で、税制上の優遇措置が講じられます。

iDeCoでは自分が拠出した掛金を自分で運用し、資産を形成します。掛金は、65歳になるまで拠出でき、受給開始年齢が60~75歳になれば老齢給付金を受け取ることができます。原則として、60歳になるまで、資産の引き出しはできません。

→「iDeCo(イデコ)のメリット・デメリット」について詳しく見る

NISA(ニーサ)

NISA(ニーサ)は「NISA口座(非課税口座)」内で、毎年一定金額の範囲内で購入した金融商品から得られる利益に税金がかからなくなる制度です。成人が利用できる一般NISA・つみたてNISA、未成年が利用できるジュニアNISAがあります。

ただしジュニアNISAについて、新規の口座開設は2023年までとされ、2024年以降は新規購入ができないことにご注意ください。

→「つみたてNISAのメリット・デメリット」について詳しく見る

サラリーマンが会社を設立する際の注意点

最近は、副業を許容する会社が増えています。そこで注目が集まっているのが「サラリーマンの会社設立」です。そこでこの項では、サラリーマンが会社を設立する際の注意点を説明します。

  • 必ず税制優遇が受けられるとは限らない
  • 廃業時にも費用がかかる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

必ず税制優遇が受けられるとは限らない

所得税は、所得金額が少ないほど税率が低くなります。そのため、適用となる所得税率が低いうちは、法人を設立しても税制優遇を得られないケースがあることを想定しておきましょう。

また会社設立を行うと税理士などに支払う報酬などが必要になるケースが多く、かえって費用増になることもあります。

サラリーマンの副業については会社を設立しないほうが費用を抑えられるケースもあります。法人化のメリットが多い場合には会社設立を前向きに検討しましょう。

廃業時にも費用がかかる

会社を設立したものの、うまくいかずにやむを得ず廃業しなくてはならないケースも想定されます。その場合、会社設立時だけでなく廃業時の手続にもお金がかかる点は知っておきましょう。

各種登記費用に約4万円、証明書の取得費用(約1千円+郵送代の数千円)、そして手続を専門家へ依頼するならその報酬費用が数十万円かかります。

会社については、設立だけでなく、廃業のためにも費用がかかることは大きな注意点です。

ここまで、サラリーマンが受けられる税制優遇制度について解説しました。自分自身の状況と、それぞれの税制優遇制度の特徴を押さえた上で、自分に合った方法を選ぶことが重要です。

税制優遇制度をはじめ、金融や資産形成の知識をつけたいという方は、書籍での勉強や専門家への相談もぜひ検討してみてください。

税制優遇制度については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

サラリーマンもしっかり税制優遇制度を活用しよう!

サラリーマンが利用できる控除をはじめとした税制優遇制度にはさまざまなものがあります。

本記事で解説した控除制度は次の5つです。

  • 給与所得控除
  • 生命保険料控除
  • 医療費控除
  • 住宅ローン控除
  • 特定支出控除

上記のうち、医療費控除と特定支出控除は確定申告が必要です。住宅ローン控除についても1年目は確定申告が必要となるため、忘れずに申告を行いましょう。

控除以外の税制優遇制度として次の3つを解説しました。

  • ふるさと納税
  • iDeCo(イデコ)
  • NISA(ニーサ)

どれも、自分で利用しないと税制優遇措置は受けられません。必要に応じて、しっかり制度を活用することをおすすめします。

副業として自分で会社の立ち上げを検討している場合は、「必ずしも税制優遇が受けられるとは限らない」「廃業時にも費用がかかる」という2点に留意しておきましょう。

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当資料は、2023年4月現在の税制・税率に基づき作成しております。税制・税率は将来変更されることがありますので、ご注意ください。また個別の税務に関する取扱については、税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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