「個人事業主に税制優遇制度はあるのか」
「フリーランスで仕事を始めたけれど、税金計算はどうすればいいんだろう」
このような悩みを抱えている人もいるでしょう。
個人事業主・フリーランスには、所得税・住民税・消費税・個人事業税という4つの税金がかかります。
本記事では、個人事業主やフリーランスにかかる4つの税金の計算方法ついて解説します。利用できる税制優遇にも触れますので、参考にしてください。
公開日:2022年9月14日
更新日:2023年4月28日
個人事業主・フリーランスにかかる税金には国税と地方税があり、それぞれの内訳は次のとおりです。
どれも1年間に得た所得に対して課せられる税金です。それぞれの概要と計算式を紹介します。
1年間(1~12月)に得た「所得」に対して課せられる国税を所得税といいます。個人事業主は確定申告で1年間の所得を申告し、自ら所得税を納めなければなりません。
所得税の計算式は次のとおりです。
所得税額=課税所得額(収入-必要経費-各種所得控除)×所得税率-控除額
所得税率や控除額は課税所得金額により異なり、5~45%の7段階です。
1年間の収入から必要経費や各種所得控除を差し引いた、課税所得額250万円の場合の所得税額を見ていきましょう。
課税所得が250万円の場合、所得税率は10%、控除額は9万7,500円です。
250万円×10%-9万7,500円=15万2,500円
課税所得額が250万円の場合、所得税額は15万2,500円となります。
所得税率や控除額は下記のとおりです。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円~194万9,000円まで | 5% | 0円 |
195万円~329万9,000円まで | 10% | 9万7,500円 |
330万円~694万9,000円まで | 20% | 42万7,500円 |
695万円~899万9,000円まで | 23% | 63万6,000円 |
900万円~1,799万9,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円~3,999万9,000円まで | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
参考:国税庁「タックスアンサー|No.2260 所得税の税率」
消費税は、納付の義務を負う課税事業者と納付が免除される免税事業者に分かれます。
課税事業者に該当する条件は、以下の3つのいずれかを満たす場合です。
消費税額の計算方法は2種類あります。
〇原則課税方式
消費税額=課税売上に係る消費税額-課税仕入れ等に係る消費税額
〇簡易課税方式
消費税額=課税売上に係る消費税額-(課税売上に係る消費税額×みなし仕入率)
なお、簡易課税が選択できるのは、前々年の課税売上高が5,000万円以下で、「消費税簡易課税制度選択届出書」を期日(原則、課税期間開始日の前日)までに提出している場合に限定される点を把握しておきましょう。
1年間の売上高が1,500万円(過去3年にわたり同様)、小売業を行い簡易課税方式を採用している場合の消費税を計算します。
なお、1,500万円は全て消費税10%の商品とします。小売業のみなし仕入率は80%です。
1,500万円×10%-(150万円×80%)=30万円
納める消費税額は30万円となります。
参考:国税庁「消費税のしくみ」
住民税には「都道府県民税」と「市区町村税」があります。納税者はあわせた額を「市区町村」に納め、その後市区町村が都道府県に納める仕組みです。
住民税は、所得に関係なく一定額を納める「均等割」と、所得に対して負担率が変わる「所得割」の2つで構成されています。
均等割は居住地により異なり、およそ5,000~6,000円です(2023年現在)。詳しくは、該当する自治体に確認してみましょう。
所得割の計算方法は次のとおりです。住民税の所得割の税率は一律10%です。
住民税の所得割額={所得額(収入-必要経費)-各種控除}×税率(10%)-税額控除額
なお、住民税の所得控除額は所得税の所得控除額と金額が異なる場合もあるため、注意が必要です。
1年間の収入から必要経費などを差し引いた、課税所得額250万円(前年も同額)、東京都在住の住民税額を見ていきましょう。
所得割の計算方法は次のとおりです。
250万円×10%=25万円
東京都に在住の場合、均等割の額は「5,000円」です(2023年現在)。
均等割と所得割を合計し、住民税の納税額は25万5,000円となります。実際の納税時は、この金額から調整控除額が差し引かれます。
住民税と所得税では人的控除(基礎控除・配偶者控除など)の金額が異なります。
調整控除額とは、2007年に国から地方へ税源移譲が行われた際に、住民税の税負担が増えすぎないよう調整するために設けられた制度です。
個人事業税は地方税の1つで、都道府県に対して納付する税金です。個人事業税の課税対象となる業種は70種のみとなっています。
なお、業種により3つに区分分けされており、それぞれの区分で税率は異なり、3~5%です。
なお、個人事業税の控除は所得税控除などとは異なります。例えば、所得税で利用できた青色申告特別控除や基礎控除・所得控除などは個人事業税では適用外となる点を把握しておきましょう。
一方、全ての人が適用できる事業主控除額は290万円です。
1年間の収入から必要経費などを差し引いた、課税所得額250万円の場合の個人事業税額を見ていきましょう。
250万円-290万円=0円
課税所得額が290万円以下であれば、個人事業税はかかりません。
個人事業主・フリーランスが特に注目すべき税制優遇のポイントは主に4つあります。
1つずつ詳しく解説します。
青色申告特別控除を受けたい場合は、青色申告承認申請書を、青色申告書による申告をしようとする年の3月15日までに提出する必要があります。
また、収益等について複式簿記で記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をすることも要件です。そして、貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載します。
当該申告書はその年の確定申告期限までに提出する必要があります。
これらの条件を満たせば、55万円の所得控除が受けられます。さらにe-Taxを用いて電子申告すれば、65万円の所得控除を受けることができます。
所得金額は収入から経費を引いて算出するため、経費が計上できると課税所得金額を抑えられます。そのため事業に関わる費用を忘れず、きちんと計上することが必要です。
自宅を事務所として使用している場合、家賃・固定電話代・インターネット料金・家賃(持ち家の場合は固定資産税)なども、「家事按分」として、経費に計上することが可能です。
前払費用とは、翌期の経費の前払のことです。そのため、当期の必要経費には算入できないのが通常です。しかし、一定の要件を満たした前払費用は、当期の必要経費に算入できます。
当期の必要経費として計上することができる前払費用は、役務の提供を受けるために支出した費用です。支払日から1年以内に提供を受ける役務かどうかが、特例を受けるための判断基準の一つになります。
個人事業主・フリーランスの中には課税売上高が大きくなるにつれ、法人化を検討する人もいます。
法人化を行うと、様々なメリットがあります。例えば、自分の給料分を経費として法人の所得から差し引けるだけでなく、給料から給与所得控除を差し引けることなどです。
法人化の手続と法人の維持にはコストがかかりますが、1つの目安として、利益が800万円を超えるようになれば検討するとよいでしょう。
ここからは、個人事業主・フリーランスでも活用できる税制優遇制度を紹介します。制度の趣旨や目的を理解して、自分に適したものを利用してください。
生命保険料控除は所得控除の1つです。その年の1月1日から12月31日までに払い込んだ生命保険料に応じて、一定の金額が契約者のその年の所得から差し引かれる制度です。
生命保険料控除では所得税と住民税を限度額まで軽減できます。旧制度と新制度で取扱が異なるので注意が必要です。
他に、保険料に対して税制が優遇される「介護医療保険料控除」や「個人年金保険料控除」もあります。
iDeCo(イデコ)は確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の制度です。自分が拠出した掛金を、自分で運用し、資産を形成します。
掛金は全額が所得控除の対象となり、運用益も非課税になります。また、年金を受け取る際は「公的年金等控除」、一時金を受け取る際は「退職所得控除」が適用されるなどの税制メリットがあります。
前述の生命保険料控除やiDeCo(イデコ)以外にも、個人事業主でも活用できる税制優遇制度は複数あります。具体的には、以下のものです。
個人事業主・フリーランスにかかる4つの税金計算方法と、個人事業主・フリーランスが利用できる税制優遇制度について紹介しました。事業のために利用した費用は漏れなく経費として計上する、青色申告特別控除を受けるなど、利用できる制度を上手に活用しましょう。
生命保険料控除やiDeCoをはじめ、利用できる制度は複数あります。それぞれの制度の仕組みを理解し、自分にあった制度を活用しましょう。
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当資料は、2023年4月現在の税制・税率に基づき作成しております。税制・税率は将来変更されることがありますので、ご注意ください。また個別の税務に関する取扱については、税理士または所轄の税務署にご確認ください。
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