※当記事は、ソニー生命から續CFP®認定者へ執筆を依頼し、原稿をソニー生命にて編集したものです
がんに罹患すると、一般的に高額な医療費がかかります。共働き世帯も多い現代では、女性が働けなくなることによる家計への影響も大きく、そのような状態で医療費がかさんでしまうと、ますますお金のやりくりが難しくなるでしょう。
そこでこの記事では、女性特有のがんの種類や罹患率、平均的な治療費などをもとに、女性にとってのがん保険の加入の必要性について解説します。
女性もがん保険の加入は検討すべき
厚生労働省の「全国がん登録 罹患数・率 報告(2020年)」によると、2020年のがん罹患数(上皮内がんを除く)は94万5,055人です。このうち男性の罹患数は53万4,814人、女性は41万0,238人と女性よりも男性の方が多くなっています。これを人口に対する割合である粗罹患率で見ると、男性は871.7、女性は633.1となり、女性のほうがかなり低めであることがわかります。※1
なお粗罹患率とは、人口10万人のうち何例罹患したかを1年単位で算出した数字のことです。※2
ところが、5歳ごとの年齢階級別に見ていくと、15歳を境に女性のほうが粗罹患率が高くなり、この状態が59歳まで続いています。この男女差はがんの種類(部位)によっても異なりますが、15歳~59歳の間でがん全体の割合が女性のほうが高いのは、乳がんや子宮がん、卵巣がんのような女性特有のがんも関係しているようです。※1
がんの治療・療養にかかる費用は部位やステージ、治療法など、さまざまな要因で決まりますが、一般的に高額になりがちです。
高額になる要因としては、がん治療および療養にかかる費用の中に公的医療保険(健康保険など)の対象にならないものがあることも挙げられます。例えば、治療法として先進医療を利用した場合の技術料、入院時の食事代、個室を利用した際の差額ベッド代、医療用ウィッグ代などは公的医療保険の対象にはなりません。
今やがんは、早期発見と適切な治療で治る病気ともいわれています。そのため、安心して治療に専念できるように経済的な不安はできる限り抑えるようにしておくことが望まれます。
がん保険で備えておくことは、その経済的な不安を減らす方法の一つです。残念ながら、がんに罹患するかしないかは誰にもわかりません。もしもに備えてがん保険への加入を検討するのはおすすめです。
※1 参照:厚生労働省「全国がん登録 罹患数・率 報告(2020年)」
(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001231386.pdf)
※2 参照:国立がん研究センター「がん情報サービス 用語集」
女性特有のがんと治療費
がんの治療にかかる費用は個人差もありますが、ここではさまざまなデータをもとに女性特有のがんの治療費について紹介します。
中でも、主な3つのがんについて、平均的な医療費の額を解説するので参考にしてください。
なお高額療養費制度を活用しない金額での表記となります。
高額療養費制度について知りたい方は「高額療養費制度とは?自己負担額の上限や負担額の軽減方法を解説」をご覧ください。
乳がんの概要と治療費
乳がんは乳腺の組織にできるがんです。多くの乳がんは、乳管からがんが発生しますが、一部の乳がんでは、腺房という小さい組織が集まって形作られる小葉(しょうよう)から発生することがあります。
また、乳がんは乳腺以外の乳房の組織から発生することもあります。がんが進行すると、がん細胞は周りの組織を壊しながら増殖し、血液やリンパ液の流れに乗って、他の場所に転移することも考えられるでしょう。※3
乳がんは男性にも発生することがありますが、前述した厚生労働省の統計によると2020年の男性の乳がんへの粗罹患率は1.0です。女性の粗罹患率は141.3で、乳がんは圧倒的に女性に多いがんであるといえます。※4
治療費は進行度や治療法にもよりますが、厚生労働省の統計によると、1件あたりの平均医療費は、入院して治療をする場合で約60万円です。※5
現役世代の人なら自己負担額は3割の約18万円と見積もれます。また、通院治療など、入院外の場合は1件あたりの平均医療費が約5万9,000円で、自己負担額は約1万8,000円(3割負担の場合)です。※6
※厚生労働省「2021年度医療給付実態調査(制度・計)」の数字をもとに、1点=10円として計算※6
※3 参照:国立がん研究センター「がん情報サービス 乳がんについて」
※4 参照:厚生労働省「全国がん登録 罹患数・率 報告(2020年)」
(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001231386.pdf)
※5 参照:厚生労働省「診療報酬制度について」
(https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken01/dl/01b.pdf)
※6 参照:厚生労働省「2021年度医療給付実態調査(制度・計)/統計表 第3表 疾病分類別、診療種類別、制度別、件数、日数(回数)、点数(金額)」入院のシート、入院外のシート
(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000040100546&fileKind=0)
子宮頸がんの概要と治療費
子宮頸がんは、子宮頸部(子宮の入り口部分)にできるがんです。早期に発見すれば比較的治療しやすく予後のよいがんといわれていますが、進行すると治療が難しいことから、早期発見が極めて重要とされています。
がんができる場所によっても早期発見のしやすさが変わり、腟に近い場所にできた場合は婦人科での観察や検査がしやすく発見されやすいですが、より奥の筒状の部分にできると発見が難しいこともあるようです。
進行すると子宮頸部の周りの組織に広がったり、骨盤の中のリンパ節や子宮から離れた肺などの臓器に転移したりすることもあります。※7
子宮頸がんの治療法には、手術療法や放射線治療、薬物療法があり、がんの状態に応じてそれぞれを単独あるいは組み合わせておこないます。初期の病変であれば、妊娠・出産の可能性を残す治療法もありますが、子宮を残すことによって再発リスクは高まる可能性があります。
治療費は進行度や具体的ながんの場所、治療法などによって差がありますが、ある医療機関が目安として提示している平均医療費の総額では、入院および手術で約22万円です。現役世代の人なら自己負担額は3割の約6万7,000円となります。※8
※7 参照:国立がん研究センター「がん情報サービス 子宮頸がんについて」
※8 参照:国立がん研究センター「国立がん研究センター中央病院 入院費概算 一覧表」
卵巣がんの概要と治療費
卵巣がんは卵巣に発生する悪性腫瘍です。卵巣腫瘍は、発生の起源となる組織によって、大きく「上皮性腫瘍」「胚細胞腫瘍」「性索間質性腫瘍」の3つに分けられますが、卵巣がんの約90%は「上皮性腫瘍」です。初期の段階でのがんでは症状が出にくく、ほとんど自覚症状もないため、見つかったときには進行していることが多いがんです。※9
卵巣がんの手術では、基本的に両側の卵巣・卵管と子宮を摘出しますが、妊娠・出産の希望が強い場合には、がんの進行程度をみながら妊娠・出産の可能性を残す治療法をとることもあります。そのため、手術の後にがん組織を詳しく調べて、抗がん剤治療(化学療法)をおこなうなど、長期にわたる厳重な経過観察が必要です。
治療費は進行度や治療法などによって差がありますが、ある医療機関が目安として提示している平均医療費総額は、入院および両側の卵巣手術の場合で約134万円、化学療法の場合は約61万円です。現役世代の人なら、自己負担額(3割負担の場合)はそれぞれ約40万円、または約18万円となります。※10
※9 参照:国立がん研究センター「がん情報サービス 卵巣がんについて」
※10 参照:国立がん研究センター「国立がん研究センター中央病院 入院費概算 一覧表」
女性のがんは30代から急激に増える
冒頭で、15歳から女性はがん罹患率が男性より高くなることを説明しましたが、女性全体の罹患率の上がり方をみると20代から緩やかに上がり始め、30代で急激に上昇する傾向にあります。※11
年齢が上がるにつれてがんの罹患率が上昇するのは男女ともに同じですが、男性の場合は全体的に50代から上がり始めるといった違いがあります。※11
女性特有のがんである乳がんや子宮のがん、卵巣がんなどに対象を絞ると、30代から60代まで上昇し、その後は低下していく傾向があります。30代から60代となると、就業や家事、育児などで家庭での責任が重い時期と重なり、女性ががんに罹患してしまうと生活上で多くの変化が生じることが予想されます。治療費以外にも収入低下や外食費の増加など、家計への影響も考えておく必要がありそうです。※11
※11 参照:厚生労働省「全国がん登録 罹患数・率 報告(2020年)」
(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001231386.pdf)
特に多いがんは「乳がん」
特に多いのが「乳がん」で、がんに罹患した女性全体の22.3%(上皮内がんを除く)を占めています。また、75歳未満の女性の累積罹患率で見ると乳がんに次いで「大腸がん」「子宮がん」と多くなっており、女性のがん上位3つのうち2つは女性特有のがんとなっています。※12
※12 参照:厚生労働省「全国がん登録 罹患数・率 報告(2020年)」
(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001231386.pdf)
女性専用のがん保険はある?
ここまで女性に多いがんや女性特有のがんについて解説してきましたが、保険会社が取り扱うがん保険では、女性特有のがんを含め、ほとんどのがんに対して保障されています。
ただし、上皮内がんなど一部のがんを保障の対象としない商品もあります。加入を検討する際には保障範囲をしっかりと確認することが大切です。
商品よっては、女性特有のがんに対してより手厚く保障する女性専用のがん保険を取り扱うものもあります。
まずは、がんの特徴や主な治療法を理解して、必要な保障を通常のがん保険で備えられるかどうか、先進医療や抗がん剤治療などに対する保障を特約で付けられるかどうかといったことを確認してみるのがよいでしょう。
女性のがん保険に関するよくある質問と回答
通常の医療保険とは保障内容や範囲など異なる部分も多いがん保険について、よくある質問に以下で回答しているので、加入を検討する際の参考にしてみてください。
何歳からがん保険に加入すべき?
がん保険に加入するべき年齢はありませんが、一度でもがんと診断されてしまうとがん保険への加入はできない商品が多いです。乳がんなど女性特有のがんもあり、30代から急激に罹患する確率が高くなることを考慮すると、女性は20代のうちからがん保険への加入を検討するのがよいでしょう。
終身型や定期型などの種類はどれを選ぶべき?
終身型は一生涯で保障が続き、保険料が上がることがない一方で、定期型に比べて加入時の保険料が割高です。
一方の定期型は、終身型より加入時の保険料が安い反面、保障期間中にがんへの罹患や死亡などがなければ保険金や給付金を受け取れません。
それぞれの特徴を考え、自分のライフプランに合わせて選びましょう。なお、定期型は更新時に通常保険料は上がりますが、保険期間満了時には同じ保障内容で更新できるのが一般的です。定期型を選ぶ場合は最長で何歳まで更新できるのか確認しておくことも大切です。
がん保険に加入する際の注意点は?
がん保険に加入するメリットは、高額になりがちながん治療費に備えられることです。また、がんの治療で就業や家事を制限されることも多いため、療養中の生活費の一助にもなります。
しかし、がん保険に加入してもがんにならなければ保険金は受け取れないため、保険料がもったいないと感じる方もいるかもしれません。がんに罹患するリスクと掛け捨てで保険料を払い込むことを天秤にかけることはできませんが、がんの種類や進行度によっては治療費を貯蓄でまかなえることもあります。
がん保険の特徴や注意点については、「がん保険はいらない?保険の特徴や必要性、入るべきかを徹底解説」でも詳しく解説しているので確認してみてください。
まとめ
がんの治療費は一般的に高額になることが多く、治療を進めていくうえで就業や家事など、生活が制限されることも考えられます。
女性のがんの罹患率は15歳から男性を上回るというデータがあります。特に乳がんや子宮頸がん、卵巣がんなど女性特有のがんの場合は、30代から急増する傾向です。
30代以降は仕事や育児、家事への責任が大きくなる時期と重なる人も少なくありません。治療費はもちろん、家計への影響も考えるとがん保険で備えておくのがおすすめです。
SL24-7271-0114
ライフプランナーに
がん保険について相談する