※当記事は、ソニー生命から柴田ファイナンシャル・プランニング技能士へ執筆を依頼し、原稿をソニー生命にて編集したものです。
「終活」という言葉を聞くことが増え、気になっているという人は多いのではないでしょうか。終活とは、これまでの人生の振り返りや現在の状況を把握して、残りの人生をよりよく過ごすために行う活動です。
遺言書の作成や財産の把握など、自分の死後に残された家族が困らないようにする活動も終活に含まれます。自分が希望している人生を送りつつ、自分の死後も家族が安心して生活するためにも、終活を行う意義は大きいでしょう。
この記事では、終活を行う利点や具体的な内容を解説します。
終活とは?
終活とは、人生の終盤の時期をどのように過ごすか考え、希望する生活を送るうえで必要な準備をする活動です。
具体的には、終末期医療の状況になったときや判断能力を喪失して要介護状態になったときに備えたり、家族が遺品整理に困らないよう身の回りのモノを片付けたりする行動が挙げられます。
終活は何歳から?いつから始めるべき?
終活は、残された家族が困らないためだけでなく、自分が残された人生をよりよく生きるためにも重要な役割を果たしています。
終活は高齢期に始めるイメージがありますが、何歳から始めても問題ありません。20代や30代という比較的若い時期から終活を行う人もいるため、思い立ったときに終活を行うとよいでしょう。
一般的には、退職して自由な時間が増える65歳前後で終活を始める人が多いようです。子どもが独立して一連のライフステージが一段落し、判断能力が十分に残っている状況で終活に着手するケースが多く見られます。
公益財団法人地方経済総合研究所が行った調査によると、終活について「既に行っている」「近いうちに始める予定」と回答した人の合計は、60歳以上の男女が50代の男女を上回っていました。(※1)年齢を重ねるにつれて終活への関心が高まっていることがわかります。
判断能力を喪失してしまうと、じゅうぶんに終活が行えない可能性があります。心身共に健康なうちに、終活に着手するとよいでしょう。
※1 参照:公益財団法人地域経済総合研究所『「終活」に関する意識調査~家族に向けて準備する「終活」とは~』P.3
終活を行う利点を解説!
終活は、自分だけでなく家族にも利点をもたらします。以下で、終活を行う具体的な利点を解説します。
①トラブル防止
終活を通じて遺産の分け方について意志を表明しておくことで、死後のトラブルを防止できます。遺言書を用意する、もしくは遺産分割の方針を家族に伝えておくなどの準備がない場合、遺産分割を巡って家族間で相続トラブルが起こる可能性があります。
最悪の場合、家族間で裁判などに発展する「争続」状態になるケースもあるため、終活を通じて自分の考えを明確にしておくことで、家族にかかる負担を軽減できるでしょう。
②不安の軽減
終活を行うことで、死に対する不安や残された家族の心配を和らげることができます。全ての人にとって死が未知の経験である以上、不安や恐怖があるのは当然です。
「明日自分が死んだら家族が困ってしまうリスクはないか」「残された家族でトラブルが起こらないか」などの心配を和らげるうえで、事前に終活で意思表明をしておくことは効果的です。
死に対する不安以外にも、終活を通じて「終末期医療はどうするか」「判断能力を喪失したらどうするか」などの不安を軽減できます。自分が希望する医療や介護を言語化しておけば、実際にそのような状態に陥ったときでも希望する処置を受けられる可能性が高まるでしょう。
③充実した老後生活
老後生活を充実させるうえで、終活は重要な意味を持ちます。これまでの人生を振り返り、今の心境を整理することで「よりよい老後生活を送るために何をすべきか」を把握できるためです。
例えば、残りの人生で配偶者をはじめとする家族への感謝を伝えたい場合は、配偶者が喜ぶことをしたり家族で楽しめる時間を作ったりして、老後生活を堪能できるでしょう。
ほかにも、これまでの人生で大切にしてきた価値観を冷静に振り返ることで、客観的に自分の人柄や性格を評価できます。自分が本当にやりたいことが整理できれば、残された時間を有効活用してより充実した生活を送れるでしょう。
終活を行う際の注意点を解説!
終活を行うことには利点がある一方で、注意点も存在します。以下で、終活を行うことによる具体的な注意すべき点を解説するので、参考にしてみてください。
①精神的負担になる可能性がある
終活は自分の死を真剣に考えることなので、精神的負担になる可能性があります。特に、健康状態に不安がある人や家族に対してネガティブな感情を持っている人の場合、終活を行うことで落ち込んでしまう恐れが考えられるでしょう。
自分の死について真剣に考えるというのは、エネルギーが必要な行為です。残りの人生をよりよくし、家族が困らないようにする目的があるとはいえ、死について考えることで後ろ向きな気分になってしまう可能性は十分に考えられます。
②法的な拘束力がない
終活の内容には、効力を持つ遺言書を除いて法的な拘束力はありません。例えば、終活ノート(エンディングノート)や口頭で家族に自分の希望を伝えたとしても、法的効力が伴わない点に注意しましょう。※2
法的な拘束力がないということは、実際に自分の希望どおりに物事が運ばない可能性があることを意味します。結局のところ、家族の協力がなければ終活の内容を反映できないという注意点があります。
※2 内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室「エンディングノートのデータ標準α版の提供について」p.3
③保管場所に困る
終活で整理する情報の一つに、自分の資産状況や保険の証券番号などの重要な個人情報があります。これらの個人情報はプライバシーに関わる大切な情報であるため、記載したノートの保管場所にも配慮が必要です。
終活ノートは実際に家族に読んでもらえないと意味がないとはいえ、場合によっては内容が改ざんされるリスクにも注意が必要です。終活は信頼できる家族と共に行うことはもちろん、日頃から家族と良好な関係を保つことも重要です。
終活に備えたやることリスト
終活の準備を始めようと考えつつも、具体的に何をすべきかわからないという人もいるのではないでしょうか。
以下で、終活に備えてやるべきことを解説します。
①遺言書の作成
相続トラブルを防ぐうえで、遺言書の作成は重要です。有効な遺言書があれば、相続人全員の反対がない限りは遺言書の内容どおりに遺産分割を行えるためです。
遺言書を作成する際は、具体的な遺言内容を考えたうえで、自筆証書遺言か公正証書遺言で作成しましょう。自筆証書遺言は形式不備で無効になるリスクや発見されずに終わってしまうリスクがあるため、確実に有効な遺言書を作成したい場合は公正証書遺言の作成をおすすめします。
なお、遺言書は何度でも書き直しができます。結婚・離婚、子どもの誕生などライフイベントが起こったときは、遺言書を適宜更新しましょう。
②医療関連の明記
終末期の医療に関する希望や意向は、文書にまとめたり医師や家族に伝えたりしておきましょう。深刻な病気に罹患したときや要介護状態になったときに、希望する治療方針や延命治療についての考えを明確にしておけば、家族が対応に困るリスクを払拭できるでしょう。
③葬儀の計画
葬儀にはさまざまな種類があります。一般葬・家族葬・直葬など、希望する葬儀方法を決めておき、家族や関係者に伝えておけば、万が一のときにもスムーズに手続を行えるでしょう。
親族以外に葬儀に呼んでほしい人がいる場合は、その人の連絡先も記載しておくことをおすすめします。
④身の回りの整理
保有している銀行口座・証券口座や保険契約、保有している不動産の書類など重要書類は整理しておきましょう。これらの重要書類は死後の手続で必須となります。
あわせて、家族が遺品整理にかける労力を削減するために、モノも整理することをおすすめします。不要なモノを断捨離すれば、気分的にもスッキリするでしょう。
⑤財産分与の計画
スムーズに遺産分割を進めるために、財産分与の計画を考えます。保有している財産を整理したうえで、遺産の分配について家族とコミュニケーションを図るとよいでしょう。
財産分与をめぐってトラブルになるケースはよくあるため、トラブルを防ぐうえでも生前に財産分与の計画を考えることは大切です。
⑥保険の見直し
保険に加入している場合は、生命保険や医療保険の契約内容を見直します。不要であれば解約し、必要であれば更新しましょう(終身保険の場合は更新不要)。
相続税対策を進めたい場合は、終身保険の活用もおすすめです。死亡保険金には、相続税の基礎控除とは別に「法定相続人の数×500万円」の非課税枠があります。※3
資産を把握する中で、相続税対策が必要と判断した場合は、生命保険の活用も検討してみてください。
※3 国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」
⑦手紙を書く
家族や懇意にしている人への気持ちを伝えるために、手紙を残すこともおすすめです。手紙は便箋に書いても、終活ノート(エンディングノート)に書いても問題ありません。
心身ともに健康なうちに文章化することで、相手に思いの丈を伝えやすくなるでしょう。
まとめ
終活とは、残された人生を充実して過ごすために有益な活動です。また、死後に家族への負担を減らすうえでも重要な役割を果たします。
終活に決まったルールはなく、何歳から始めても問題ありません。何を行うべきか迷った場合は、こちらの記事を参考にしながら、行うべきことを整理してみましょう。
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