近年、老後に一人暮らしをする人が増えています。既婚者であっても、配偶者との死別や離婚、子どもの独立によって老後に一人暮らしになるケースもあるでしょう。
歳を取ると体が不自由になり、一人での生活が難しくなるため、老後の一人暮らしに不安を抱く方も少なくないのではないでしょうか。
この記事では、老後の一人暮らしにかかる生活費の平均や早めに準備すべきことを解説します。
老後の一人暮らしに関する現状
結婚していても、配偶者との死別や離婚、子どもの独立など、一人世帯となる理由はさまざまです。
老後の一人暮らしに関する現状について、日本の高齢者人口の割合や、一人暮らしの高齢者の割合などを解説します。
日本の高齢者人口の割合
総務省統計局の発表した「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」(2023年9月17日掲載)によると、日本の65歳以上の高齢者数は、2023年時点で3,623万人となり、総人口に占める割合は29.1%です。
この割合は今後も上昇し、第2次ベビーブーム期(1971年〜1974年)生まれの世代が65歳以上になる2040年には34.8%になると見込まれています。
なお、日本の高齢者人口の割合は世界200の国や地域のなかで最も高い割合となっています。
日本の29.1%に次いで多いのがイタリアで24.5%、フィンランドで23.6%です。主要10ヵ国(※)で比較しても、「65歳〜74歳」「75歳以上」のいずれの区分においても日本が最も高い割合です。
※主要10ヵ国:日本、イタリア、ドイツ、フランス、カナダ、イギリス、韓国、アメリカ、中国、インド
一人暮らしの高齢者の割合
厚生労働省が2022年に発表した「国民生活基礎調査の概況」によると、65歳以上の高齢者がいる世帯は、全世帯の50.6%です。
高齢者がいる世帯における単独世帯の割合は年々増え続け、2021年に28.8%、2022年おいても31.8%となっています。高齢者の家族形態を見ると、夫婦のみの世帯が最も多く、次いで単独世帯となり、三世代世帯の割合は、年を追うごとに減少傾向です。
高齢化が進んだことに加え、核家族世帯が増えたことも、高齢者の一人暮らしが増加する要因と考えられます。
参考:総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」
参考:厚生労働省「2022年 国民生活基礎調査の概況」
老後の一人暮らしにかかる生活費の目安額
総務省統計局の「家計調査年報(2022年)」によると、2022年における65歳以上の単身無職世帯の実収入は13万4,915円です。
このうち、税金や社会保険料を除き、自分で自由に使える可処分所得は、12万2,559円となっています。
可処分所得に対して消費支出は14万3,139円で、毎月2万580円のマイナスになる計算です。
老後の一人暮らしにかかる生活費の内訳
総務省統計局の「家計調査年報(2022年)」を参考に、老後の一人暮らしにかかる毎月の生活費の内訳を以下にまとめました。
支出費目 | 割合 |
食料 | 26.2% |
住居 | 8.9% |
光熱・水道 | 10.3% |
家具・家事用品 | 4.2% |
被服及び履物 | 2.2% |
保健医療 | 5.7% |
交通・通信 | 10.2% |
教育 | 0.0% |
教養娯楽 | 10.1% |
その他(交際費を含む) | 34.8% |
参考:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)結果の概要」
支出費目のなかで食料が最も多く、1ヵ月の消費支出14万3,139円の26.2%を占めます。
生活を維持する費用としては、水道光熱費、住居費、交通・通信費、教養娯楽費がそれぞれ約10%、家具・家事用品が4.2%、被服及び履物が2.2%です。保健医療は5.7%、交際費を含むその他の支出は34.8%でした。
年金受給額や支出額には各世帯で違いがあるものの、老後を年金だけで乗り切るには厳しい現状であることがわかります。
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【男女別】老後の一人暮らしに貯めておきたい資金
老後の一人暮らしに必要な資金はどのくらいなのかを知ることで、現役時代からいくら貯蓄しておけばいいのかの目安がわかります。
男性と女性とでは、年金受給額や平均寿命などが異なるため、それぞれにわけて老後に必要な資金を確認していきましょう。
男性の場合
老後の一人暮らしに必要な金額を計算するためには、毎月の収入額や生活費、平均寿命などの情報が必要です。
毎月の収入額は公的年金がメインとなることが多いため、厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」から老齢厚生年金と老齢基礎年金の男女別平均年金月額を用います。月々の生活費は、前章で解説した消費支出金額14万3,139円を用い、男性の平均寿命は厚生労働省「簡易生命表」から用います。
年金受給額(月) | 老齢厚生年金16万3,875円(→16万4,000円として試算) 老齢基礎年金5万8,798円(→5万9,000円として試算) |
生活費(月) | 14万3,139円(→14万3000円として試算) |
平均寿命 | 81.05歳 |
参考:厚生労働省「令和4年簡易生命表の概況|1 主な年齢の平均余命」
参考:厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
また、介護費用は、生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」によると、平均で月8万3,000円かかると報告されています。仮に5年間介護サービスを受けるとすると、約500万円(8万3,000円×12ヵ月×5年間=498万円)の資金が必要になります。
さらに葬儀費用は200万円前後かかるとされています。
これらの情報を元に必要な貯蓄額を計算します。なお、厚生年金受給者と老齢年金受給者とでは収入が異なるため、分けて試算します。
老齢厚生年金受給者の場合
老齢厚生年金を受給する方の場合、年金受給額が約16万4,000円なので生活費14万3,000円を差し引くと、毎月2万1,000円程のプラスとなります。
年金受給開始年齢を65歳からとし、寿命が81歳までとする場合、16年間で403万2,000円(2万1,000円×12ヵ月×16年=403万2,000円)となります。
しかし、老後に必要な資金はこれだけではありません。もし、要介護状態になると、介護費用と葬儀費用で700万円程度が必要になるため、403万2,000円のプラス分を差し引いて、残り300万円は貯蓄しておくと安心です。
老齢基礎年金受給者の場合
老齢基礎年金を受給する方の場合、年金受給額は約5万9,000円なので、生活費14万3,000円を差し引くと、毎月8万4,000円程のマイナスとなります。
年金受給開始年齢を65歳からとし、寿命が81歳までとする場合、16年間で1,612万8,000円(8万4,000円×12ヵ月×16年=1,612万8,000円)になります。
さらに、要介護状態になった場合の介護費用と葬儀費用で700万円を準備するとなると、合計で2,310万円程になります。
女性の場合
女性の老後の一人暮らしに必要な金額を計算する場合も、男性と同様に毎月の収入額は厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」から老齢厚生年金と老齢基礎年金の男女別平均年金月額を用い、生活費は前章で解説した消費支出金額13万2,476円を用います。女性の平均寿命は、厚生労働省「簡易生命表」から用います。
年金受給額(月) | 老齢厚生年金10万4,878円(→10万5,000円として試算) 老齢基礎年金5万4,426円(→5万4,000円として試算) |
生活費(月) | 14万3,139円(→14万3000円として試算) |
平均寿命 | 87.09歳 |
参考:厚生労働省「令和4年簡易生命表の概況|1 主な年齢の平均余命」
参考:厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
なお、女性は男性よりも老齢厚生年金・老齢基礎年金の平均受給額が少ないですが、これはそもそもの平均給与が男性よりも低いことが多いことや、出産や子育てなどで休職した期間があり勤務期間が短くなったことなどが理由と考えられます。
というのも、受給額は、現役時代の平均給与額と加入期間の長さで決まるためです。
また、介護費用は、生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」によると、平均で月8万3,000円かかると報告されています。女性は男性に比べて平均寿命が約6年長いため、仮に10年間介護サービスを受けるとすると、約1,000万円(8万3,000円×12ヵ月×10年間=996万円)の資金が必要になります。
さらに葬儀費用として200万円前後の準備が必要と仮定します。
これらの情報を元に、老後に必要な貯蓄額を計算します。
老齢厚生年金受給者の場合
老齢厚生年金を受給する方の場合、年金受給額が約10万5,000円で生活費が14万3,000円かかるため、毎月3万8,000円程のマイナスとなります。
年金受給開始年齢を65歳からとし、寿命が87歳までとする場合、22年間で1,003万2,000円(3万8,000円×12ヵ月×22年=1,003万2,000円)程になります。
さらに、介護費用や葬儀費用の1,200万円を追加すると合計で2,200万円程になります。
老齢基礎年金受給者の場合
老齢基礎年金を受給する方の場合、年金受給額は約5万4,000円なので、生活費14万3,000円を差し引くと、毎月8万9,000円程のマイナスとなります。
年金受給開始年齢を65歳からとし、寿命を87歳までとする場合、22年間で2,349万6,000円(8万9,000円×12ヵ月×22年=2,349万6,000円)になります。
さらに介護費用と葬儀費用の1,200万円もプラスすると、合計で3,550万円程になります。
参考記事:老後資金の平均額とは?生活にかかる費用や早めに取るべき行動を紹介
老後の一人暮らしに向けてやっておきたい・考えておきたいこと
年齢を重ねるにつれて、生活にさまざまな不安を抱く方も少なくありません。資金面や健康面など心配ごとが増えていくこともあるでしょう。
しかし、現役時代に少しでも取り組んでおくことができれば、老後の不安を軽減できるかもしれません。
老後に一人暮らしをすることに向けて、やっておきたいことや考えておきたいことについて解説します。
快適な一人暮らしのために住む場所を決める
快適に老後の生活を送るには、住む場所についてよく検討することが大切です。
例えば、現在広い一軒家に住んでいる場合、高齢になると掃除や家の管理が負担になる可能性があります。
また、郊外に住んでいる場合は、買い物や病院などに出かけるとき車を乗り続ける必要があり運転への不安もあるでしょう。
老後の住む場所を考える際には、以下の点を主に検討しましょう。
- 住み替えの必要はあるか
- 一軒家かマンションか
- 借家か持ち家か
- 郊外か都市部か
まずは、現在住んでいる場所に老後も引き続き住んだ場合、不都合な点がないかどうかを検討します。
住み替えが必要と考えるのであれば、一軒家がいいかマンションがいいか、また、賃貸なのか持ち家にするのか考えなければなりません。
老後は家で過ごす時間が多くなるため、充実した毎日が過ごせるように早めに検討を始めるといいでしょう。
楽しく幸せに過ごすためにつながりを作る
現役時代と異なり、老後の生活は人とのつながりが希薄になりがちです。退職や配偶者の病気やケガによる死別、子どもの独立などにより一人暮らしになり、孤独感を覚える人も多いのではないでしょうか。
家族や友人、近所の人たちと定期的にコミュニケーションを取ることで精神的な負担を軽減できる可能性があります。
孤独感など精神的な不安を軽くする方法として、趣味を持つことがあります。地域のカルチャーセンターに通い、趣味の仲間を見つけたり新しいことにチャレンジしたりするのもいいでしょう。
お金をかけずとも、散歩やウォーキングなら趣味を楽しみつつ健康にもなるというメリットがあります。
趣味を持てれば、生活に張りが出て毎日を生き生きと暮らせるでしょう。
健康寿命を伸ばす方法を知る・実践する
高齢になるほど健康面の不安が感じられるようになり、特に日本人の死因トップを占める三疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)に不安を抱く方は多いでしょう。
厚生労働省の令和4年人口動態統計の概況によると、全死亡原因のうちがんによる死亡は24.5%、心疾患は14.8%、脳血管疾患は6.9%で、三疾病での死亡が半数近くを占めていることがわかります。
もちろん、こういった死亡原因となる疾病だけでなく、身体機能や体力の低下により、物をよく落としたりすぐ疲れたりと生活に支障が出やすくなります。
このように、身体に不調を抱えながらの生活は快適な一人暮らしとはいえません。だからこそ、「健康寿命」を長く保つことが大切だと言われています。
健康寿命とは、健康面の問題(介護や寝たきりなど)で日常生活が制限されることなく自立して生活できる期間のことをいいます。
体力が低下し、一人で生活するのが難しくなる前に、日頃から散歩や軽い運動をしたり、バランスの良い食事をすることが大切です。
参考:厚生労働省「令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況 」
老後に働くことも選択肢の一つにする
老後は現役時代に比べて、収入が低くなるため、収支バランスが崩れるとお金が足りなくなってしまいます。
病気などで入院したり介護施設に入所したりする可能性が高くなるため、まとまった支出が必要になることも考えられます。
こういった経済的な不安を解消するために、老後の自由な時間を活用し、仕事をするという選択肢を加えるのもいいでしょう。
国も、働く意欲がある高年齢者が仕事に就く機会を得られるよう「高年齢者雇用安定法」を改正し、定年の70歳までの引き上げや、定年制の廃止などを推進しています。
ハローワークや求人サイトなどで見つけるほか、派遣会社に登録して仕事を紹介してもらう方法もあります。
老後も働くことで人間関係が広がるほか、厚生年金に加入できれば将来受給できる年金額を増やすことも可能です。
参考:生命保険文化センター「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査」
参考:厚生労働省「令和4年簡易生命表の概況」
参考:厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
老後の一人暮らしを想定して早めに備えておこう
この記事では、老後の一人暮らしにかかる生活費の平均や早めに準備すべきことを解説しました。
老後は病気やケガによって大きな費用が必要になる可能性があります。
そのため、老後を迎える前にある程度の資金を確保する、保険加入でリスクに備えておくなどの必要があります。
現在加入している保険の保障で、ケガや病気での出費をどの程度賄えるのか、年齢に合わせた保障内容になっているかなど、一度保険の見直しをしてみるのも良いでしょう。
保険の加入は、なるべく健康なうちに済ませることが大切です。
ご相談はソニー生命のライフプランナーへ
ソニー生命では、一人ひとりのライフプランに合わせたオーダーメイド設計で適した保障プランを提案しています。自分に必要な保障内容のみに加入すれば、賢くリスクに備えることが可能です。
老後の生活に備え、保険加入を検討している方は、ぜひソニー生命のライフプランナーへご相談ください。
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