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老後の年金受給額はいくら?平均受給額や計算方法について解説

dotL編集担当者B

老後に必要な資金を計算するうえで、年金額を考慮することは非常に重要です。自身の年収や家族構成などによっても、受給できる公的年金額は変動するので、自身の状況に合わせて正しく計算しましょう。計算方法や受給額シミュレーション、老後資金を増やす方法をご紹介しているので、詳しく見ていきましょう。

掲載日
2024年9年17日(火)

18分

年金は、老後の生活を支える重要な収入源です。年金がいくらもらえるかによって、老後の生活スタイルや別途用意するべき金額も変わるでしょう。

そこで本記事では、年金の平均受給額や計算方法、シミュレーションなどについて解説します。老後の資金計画にお役立てください。

年金の種類

日本の公的年金の種類は、主に「国民年金」と「厚生年金」の2種類です。このほかに、公的年金に上乗せできる「私的年金」があります。

国民年金

国民年金は、20歳以上の方が全員加入しなければならない年金です。
厚生年金に加入していない自営業者やフリーター、20歳以上の学生なども国民年金に加入する必要があります。
国民年金の年金保険料や年金額は、原則として全員同一です。

なお、厚生年金加入者の被扶養者である配偶者は、「第3号被保険者」と呼ばれます。第3号被保険者も、国民年金加入者の一種ですが、国民年金保険料の負担はありません。

厚生年金

厚生年金は、会社に雇用されている方が加入する年金です。厚生年金加入者は、国民年金の「第2号被保険者」に該当します。支払う厚生年金保険料に国民年金保険料が含まれているため、将来は厚生年金と国民年金の両方を受け取ることが可能です。

なお、厚生年金保険料は給与額や賞与額に応じて決まり、本人と勤務先が半額ずつ負担します。

私的年金

私的年金は、国民年金や厚生年金とは別に支払われる年金です。企業が掛金を支払う企業年金と、個人が加入して掛金を負担する個人単位の年金に分けられます。主に下記のような私的年金があります。

  • 企業型確定拠出年金
    企業型確定拠出年金は、年金の掛金を企業が毎月拠出する制度で、企業年金の一種です。
  • 確定給付企業年金
    確定給付企業年金は、従業員が将来受け取る年金の給付額があらかじめ約束されている制度を指します。企業型確定拠出年金と同様、企業年金のひとつです。
  • iDeCo
    iDeCoは「個人型確定拠出年金」といい、自分が掛金を拠出して運用もおこない、個人で資産形成ができる制度です。掛金が全額非課税になるといった特徴があります。
  • 国民年金基金
    国民年金基金は、自営業者やフリーランスなどが国民年金に上乗せして加入できる年金です。
  • 個人年金
    個人年金は民間の生命保険会社が販売する保険商品のひとつで、私的年金に含まれます。

公的年金の平均受給額

厚生労働省の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢基礎年金(国民年金)の平均年金月額は5万6,428円です。一方、厚生年金保険受給者の平均年金月額は、国民年金分を含めて14万4,982円でした。
年金受給者の平均年金月額の推移は、それぞれ下記のとおりです。

国民年金受給者の平均年金月額の推移

(年度末現在、単位:円)

  老齢年金
・25年以上
  通算老齢年金・25年未満 障害年金 遺族年金
新規裁定
平成30年度 55,809 53,568 19,064 72,109 83,208
(52,028) (57,416) (18,976) (72,373) (75,086)
[50,520] [54,614] [18,974] [72,415] [71,789]
令和元年度 56,049 53,905 19,126 72,042 83,644
(52,437) (57,974) (19,019) (72,301) (76,164)
[50,875] [54,917] [19,015] [72,341] [73,079]
令和2年度 56,358 54,410 19,282 72,039 84,173
(52,896) (58,421) (19,091) (72,290) (77,276)
[51,276] [55,253] [19,084] [72,329] [74,351]
令和3年度 56,479 54,040 19,398 71,868 84,349
(53,185) (58,188) (19,084) (72,098) (77,994)
[51,514] [54,735] [19,073] [72,134] [75,222]
令和4年度 56,428 53,615 19,495 71,499 84,352
(53,319) (58,113) (19,012) (71,700) (78,513)
[51,607] [54,850] [18,994] [71,728] [75,847]

注1.新法基礎年金について老齢基礎年金の受給資格期間を原則として25年以上有するものは「老齢年金・25年以上」に、それ以外のものは「通算老齢年金・25年未満」に計上している。
注2.( )内は、基礎のみ・旧国年の受給者について再掲したものである。ここで「基礎のみ」とは、同一の年金種別の厚生年金保険(第1号)(旧共済組合を除く)の受給権を有しない基礎年金受給者をいう。
注3.[ ]内は、基礎のみ共済なし・旧国年の受給者について再掲したものである。ここで「基礎のみ共済なし」とは「基礎のみ」の受給者のうち、共済組合等の組合員等たる厚生年金保険の被保険者期間(平成27年9月以前の共済組合等の組合員等の期間を含む)を有しない受給者をいう。

※厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(2023年12月)

厚生年金受給者の平均年金月額の推移

(年度末現在、単位:円)

  老齢年金     通算老齢年金・25年未満 障害年金  遺族年金

(再掲)
基礎または定額あり

(再掲)
基礎および定額なし
 平成30年度 145,865 153,049 69,095 60,687 102,855 83,704
 令和元年度 146,162 152,109 66,574 61,509 102,711 83,285
 2 146,145 151,543 66,934 62,116 102,477 82,947
 3 145,665 150,548 68,618 63,308 102,368 82,371
 4 144,982 149,216 69,612 63,538 101,456 81,540

※厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(2023年12月)

国民年金の受給額は保険料の納付月数で決まるため、未納期間がある方はその分受給平均額が下がります。一方、厚生年金の受給額は、保険料の納付月数と収入によって決まる仕組みです。収入が多ければ、その分受給額も上がります。

公的年金の受給額の計算方法

公的年金の受給額は、加入している年金の受給額の合計です。ここでは、国民年金と厚生年金について、計算方法を紹介します。

老齢基礎年金の受給額の計算方法

老齢基礎年金の受給額は、下記の計算式で求められます。

<老齢基礎年金の年間受給額の計算式>
老齢基礎年金(国民年金)受給額=毎年決まる年間の支給額×保険料納付済月数÷480ヵ月

2024年の場合、年間支給額は81万6,000円です。20歳から480ヵ月すべての期間納付した方は、満額受給できます。一方、納付月数が240ヵ月の場合、半額の40万8,000円になります。

ただし、納付の免除を受けていた場合は下記の割合で減額されます。

納付金額と減額の割合

納付金額 減額の割合
全額免除 免除月数×1/2
4分の1納付 納付月数×5/8
半額納付 半額納付月数×6/8
4分の3納付 納付月数×7/8

老齢厚生年金の受給額の計算方法

老齢厚生年金の受給額は、下記の計算式で算出できます。

<老齢厚生年金の年間受給額の計算式>
老齢厚生年金受給額=報酬比例部分+経過的加算+加給年金額

  • 報酬比例部分
    報酬比例部分とは、現役時代の収入に応じて支給される年金です。2003年4月以降は、下記の計算式で算出されます。

<報酬比例部分の計算式>
報酬比例部分=平均標準報酬額×5.481÷1000×加入月数

平均標準報酬額は、平均報酬月額と標準賞与額の総額を加入月数で割った数字です。平均報酬月額や標準賞与額は、社会保険料の算出の基礎となる数字です。給与明細などに記載されているので見てみましょう。

  • 経過的加算
    経過的加算は、20歳未満または60歳以降に厚生年金保険に加入した場合、老齢厚生年金に上乗せされる金額のことです。ただし、40年間厚生年金に加入している場合は対象外です。本記事では考慮しません。
  • 加給年金
    加給年金は、下記に該当する場合に支給される年金です。条件に応じて、22万8,700円または7万6,200円が年間の年金額に加算されます。

<加給年金の受給条件>

  • 厚生年金の被保険者期間が20年以上ある
  • 65歳時点で、65歳未満の配偶者または18歳到達年度末日までの子の生計を維持している

年金受給額のシミュレーション

家族構成別に、もらえる年金額の平均値を紹介します。自分の年金受給額を計算する際の参考にしてください。

シミュレーションには、厚生労働省の「公的年金シミュレーター」を使用しています。加給年金は考慮しておらず、実際には社会保険料や住民税の支払があるため手取り額が減少することにご留意ください。

共働き夫婦の場合

夫婦ともに会社員で、夫が年収500万円、妻が年収300万円の場合、年金額の概算は夫が約16万5,000円、妻が約13万円です。合計は、約29万5,000円となります。

会社員と専業主婦の場合

夫が会社員で年収500万円、妻が年収400万円の会社員を35歳まで勤め、その後は第3号被保険者となった場合、夫婦の年金額の概算は、夫が約16万5,000円、妻が約8万8,000円です。合計は約25万3,000円となります。

自営業の夫婦の場合

20歳から2人とも国民年金に加入していた自営業夫婦が受け取れる年金額の概算は、1ヵ月あたり13万2,500円です。
自営業夫婦の場合、受け取れる年金は国民年金2人分が基本です。2023年度の場合、月額6万6,250円が老齢基礎年金の満額ですから、2人分で上記の金額となります。ただし、未納期間がある場合は上記よりも少なくなります。

単身の会社員の場合

20歳から22歳まで国民年金で、それ以降64歳まで厚生年金に加入した単身会社員について、平均年収が300万円、400万円、500万円、700万円、900万円の場合の年金額を見てみましょう。

平均年収別・単身会社員の年金額の推移

平均年収 年金額(月) 社会保険料(年) 手取年金額(月)
300万円 約13万円 約15万円 約12万円
400万円 約15万円 約17万円 約13万円
500万円 約17万円 約22万円 約15万円
700万円 約20万円 約33万円 約17万円
900万円 約24万円 約43万円 約20万円

年金受給額を変動させる要因

年金受給額は、常に一定ではありません。さまざまな要因によって変動する可能性があります。現在の年金受給額をもとにしたシミュレーションは、将来的に変化するかもしれません。
年金受給額が変動する要因を知るとともに、年金受給額の変化に応じて資金計画を見直すことが大切です。

物価や賃金の変動

年金額は、物価や賃金の変動に応じて調整されます。賃金や物価が上がれば、その分年金額も見直されて上昇することになります。
ただし、後述のマクロ経済スライドによる調整によって、上げ幅が限定的になる可能性があります。

給与乗率の変動

給与乗率とは、厚生年金の報酬比例部分にかける割合のことです。この割合は随時見直しがおこなわれていて、直近では2003年4月に7.125から5.481に変更されました。なお、これは、給与だけでなく賞与も年金に反映させるという制度改正に伴っておこなわれた変更です。

マクロ経済スライドによる調整

マクロ経済スライドとは、物価や賃金の変動による改定率を反映させる際に、被保険者数の減少や平均余命の上昇などに応じた「スライド調整率」を差し引く制度です。マクロ経済スライドによる調整がおこなわれることで、物価や賃金の上昇による年金受給額のアップが限定的になる可能性があります。

ただし、マクロ経済スライドの調整が物価や賃金の上昇率を上回る場合でも、年金額が下がることはありません。物価や賃金が下落した場合のみ支給額が減少します。

老後資金を増やす方法

老後にゆとりある生活を送るためには、ある程度の老後資金が必要です。ここでは、老後資金を増やす主な方法をご紹介します。

国民年金を追納する

国民年金に未納期間がある方は、追納することで年金額を増やすことができ、老後資金も増やせます。
免除や納付猶予、学生納付特例の承認などを受けた未納期間がある方は、10年以内であれば追納が可能です。

一方、特別な手続をせずに年金保険料を支払わなかった期間がある場合は、納付期限から2年間納付が可能です。2年を過ぎると時効になって納められなくなってしまうため、注意してください。

定年退職後も働く

定年退職後も働くことで厚生年金の加入期間を延長でき、老後資金の増加につなげることができます。現状では、70歳に達するまでは厚生年金に加入できるため、その分年金額を上乗せできるでしょう。厚生年金にできるだけ長く加入するのが、年金受給額を効率よく増やすコツです。

受給開始時期を繰り下げる

年金の繰下げ受給をすると、繰り下げた月数×0.7%が年金額に加算されます。最大で75歳まで繰り下げ、84%加算させることが可能です。

ただし、繰り下げ期間中は加給年金がもらえなくなるため、受給条件に該当する方は注意してください。また、繰り下げて受給額が増えると、その分社会保険料が高額になる点にも注意が必要です。
なお、国民年金と厚生年金どちらか一方のみ繰り下げることも可能です。加給年金を受け取りたい場合は国民年金のみ繰り下げる方法もあります。

個人年金保険に加入する

個人年金保険とは、民間の生命保険会社が提供している保険商品です。公的年金に上乗せする形で年金を受け取ることができ、老後資金を増やせます。年金の受取期間や受取額を自由に設計できるため、状況に応じて活用可能です。また、受取前に万一のことがあった場合は、死亡保険金が支払われます。

iDeCoを利用する

iDeCoは前述のとおり、自分で掛金を拠出し、自分の年金を作れる制度です。毎月一定額を拠出して運用指示をおこない、60歳以降に年金として運用した資産を受け取ります。

拠出金は全額が所得控除の対象になり、運用益も非課税であるため、老後資金を増やすにはおすすめの方法です。ただし、受取時には税金がかかる可能性があります。「手数料がかかる」「原則として60歳まで引き出せず解約もできない」といったデメリットもあるため、制度を十分理解して活用してください。

NISAを利用する

NISAは、一定の要件を満たす投資の利益が非課税になる制度です。通常、約20%課税される税金が非課税になるため、その分多くのお金を手元に残せます。

年間の投資額や投資先に制限があるほか、その他の投資と損益通算ができないといったデメリットがありますが、NISA口座でのみ取引をするのであればそれほど問題はないでしょう。

年金受給額に関するよくある質問

年金の受給額に関して、よくある質問とその答えをご紹介します。年金の疑問をなくすため、ぜひご確認ください。

年金制度は何種類あるのですか?

年金制度は、下記の3種類に大別できます。

<主な年金制度>

  • 20歳以上60歳未満の方が全員加入する国民年金
  • 会社勤めの方が加入する厚生年金
  • それ以外の私的年金

私的年金は、さらに企業年金と個人単位の年金に分けられます。企業年金には企業型確定拠出年金や確定給付企業年金、個人単位の年金は国民年金基金やiDeCo(個人型確定拠出年金)などです。

年金受給額はどのように確認できますか?

年金受給額は、ねんきん定期便やねんきんネットで確認できます。公的年金シミュレーターを使って試算することも可能ですが、年収は年々変化するため、正確に知りたい場合は加入記録をもとに計算されるねんきん定期便やねんきんネットの数字を確認するといいでしょう。

年金をひと月に25万円もらうためには年収はいくら必要ですか?

年金をひと月に25万円もらうための年収は約1,000万円ですが、給与と賞与のバランスによっても年金額が変わります。
また、入社から定年退職までの平均年収が約1,000万円になる方はまれです。年金をひと月に25万円受給できる方は多くはありません。

ゆとりある老後のために、計画的な資産形成を

ゆとりある老後のためには、計画的な資産形成が必須です。そのためにも、まずは、将来いくらくらいの年金を受け取れるのかを試算してみてください。

受け取れる年金額が現在の生活費や、老後の生活費の予定に満たない場合は、不足分を補えるだけの資産を築いておくことがおすすめです。現役時代から老後資金について考えておきましょう。

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